第19章 #19 死線を越えろ
巨人は人を食べても人には戻らない。
しかし、ライナー達の仲間ならそれは巨人化の能力を有した人間、つまり巨人がその能力を持つ人間を食べると人間に戻り、さらに相手の能力を手に入れるのではないか、それがハンジの考えだった。
「先日の戦いで、ライナーは逃げたエレンに巨人を投げつけたという。巨人を操れるというエレンの叫びの力を他の巨人に移そうとしたんじゃないか。だとすればエレンは器であって交換可能な存在なんだ。つまり、もし王政が巨人を持っていればエレンはそいつに喰われるだろう」
エルヴィンが考えるように下を向く。
しばらく沈黙が続いたが、エルヴィンは顔を上げハンジに告げた。
「ハンジ、おそらくリヴァイがサネス達を捉える。事実を吐かせてきてくれ」
「事実?」
「本当の王家はどこか」
ハンジとモブリットが部屋を出ていき、エルヴィンは深い息を吐きながらリリアの隣に座った。
「リリア、寝なくて大丈夫か?」
「寝てる場合じゃなくなったよ」
そうだな、とエルヴィンは返し、真っ直ぐにリリアを見つめた。