第19章 #19 死線を越えろ
「そのまま横になりなさい」
ゆっくりと横になったリリアの額に手を当てる。
どうやら熱があるようで、顔も少し赤い。
エルヴィンはリリアに布団を掛けると優しく頭を撫でた。
「また無理をしたんだな。少し寝なさい」
「自分の部屋に戻るよ」
「いいから、ここで寝なさい」
「お兄ちゃん、エレンとヒストリアの事…ごめんなさい」
「……必死に頑張ったのだろう?まだ大丈夫だ。お前が無事で良かったよ」
リリアはゆっくり目を閉じた。すぐに意識は無くなり相当疲労していたようだ。
エルヴィンはソッとリリアの前髪にキスをすると立ち上がり、窓から外を見つめた。
数十分経った頃だ。
ナイルがいなくなった頃を見計らってハンジとモブリットがエルヴィンの部屋へ飛び込んできた。
「エルヴィン、大変だ!!事態が悪化した!それも二つだ!!
一つはエレンとヒストリアが拉致された。私の部下3人もやられた。私はすぐにリヴァイと合流して行き先を何としても探るつもりだ!」
「それは先程リリアに聞いた。で、もう一つは?」
「エレンが、ユミルとベルトルトの会話を思い出したんだけど、これが事実だとすればっ……!飛びそうだ、頭がっ!!」
興奮しているハンジにエルヴィンが机の上に置いてある水をカップに入れて渡した。
ハンジが勢いよく水を飲み干す。
「ハンジ、少し落ち着いて話せ。リリアが起きる。で、問題はなんだ」
「へっ?リリア?」
ハンジは指さされたベッドを見てリリアにようやく気付いた。
リリアの目はバッチリ開いている。
「起きてるよ。それで、もう一個は?」
「そうだっ!!早く救出しないと、エレンは喰われる!!」
エルヴィンとリリアが目を見開く。
エレンから預かった紙には先日の巨大樹の森でのユミルとベルトルトの会話が書かれており、どうやらユミルは壁の中をうろつく巨人の一人で、ベルトルトやライナー、アニの仲間を食べてしまったようだ。