第19章 #19 死線を越えろ
再びエルヴィンの部屋へと戻ると、エルヴィンは窓から外を眺めており、二人の気配を察すると振り向いた。そしてナイルを見て口を開く。
「お前と話がしたいと思っていた」
「思い出話に付き合うつもりはないぞ」
「つれないな、ナイル。一緒に調査兵団を志した仲だろう」
エルヴィンは椅子に座り、机の上に置かれているランプに手を掛けた。
蓋を開け、マッチに火を灯し見つめる。
「この小さな世界は変わろうとしている。希望か、絶望か、中央は人類の未来を託すに足るか否か。選ぶのは誰だ、誰が選ぶ、お前は誰を信じる?」
「エルヴィン、お前。何をやるつもりだ」
手に持っていたマッチの炎をランプに移し、蓋をした。
「毎度お馴染みの博打だ」
ナイルは大きく息を吐くと体を翻した。
「とにかく、俺はこれで失礼する」
部屋を出たナイル、残された二人は顔を見合わせた。
「お帰り、リリア」
「ただいま。何か戻ったらとんでもない事になってたね」
あぁ、とエルヴィンが呟く。リリアはため息をつくとベッドに腰掛けた。
エレンとヒストリアの事を報告しなければならない。
「ごめんなさい、エレンとヒストリアが拐われてしまった」
「……そうか」
「途中で憲兵に襲われて、お兄ちゃん、人間に特化した立体機動装置があるって知ってた?」
「?」
「あれはどう見ても巨人を倒すための武器じゃない。人間を殺すための武器だった。私もリヴァイがいなかったら今頃頭に穴が開いてたかもしれない」
リリアが膝を抱えて座り、頭を下げる。
「リリア?どうした?」
「クラクラする。体も怠い」
エルヴィンがリリアの隣に座り体を支えた。