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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第19章 #19 死線を越えろ



リリアは物影に座り込み、ボゥっと遠くを見ていた。
疲れた、もう体がヘトヘトになっている。
さすがに町中をあの速度で飛び回るのには体力を消費する。しかもあのリヴァイについて行ったのだ。

しかしここで時間を食うわけにはいかない、リリアは立ち上がると後ろから近付いてきていたリヴァイに手を振った。

「リヴァイ、私は戻るよ。あとはお願いね」
「あぁ」

結局、エレンとヒストリアは助ける事が出来なかった。
アルミンも人を殺めてしまった事に酷く落ち込んでしまっている。ジャンも自分がやらなかった事でアルミンに人を殺めさせてしまった事を悔いているようだ。

「リリア」
「ん?」
「よく付いてきた」

リヴァイがリリアの手を握る。

「よくやった」

リリアが目を見開いた。
褒められた、あのリヴァイに。
彼は人を褒めることなど滅多にしない、勿論リリアも今までリヴァイから色々教わってきたが、褒められた記憶なんてほぼないに等しい。
あまりに嬉しかったのか、リリアの頬が真っ赤に染まった。
そして満面の笑みをリヴァイに返す。

「リヴァイに…褒められた」

リヴァイが目を見開く。
何故か胸の奥がギュウッと痛い。視線をそらすとリヴァイはリリアから手を離した。

「……ここからは会う事はないかもしれない。死ぬなよ」
「リヴァイこそ気を付けて。色々守ってくれてありがとう」


リリアは手を振るとその場から離れた。
リヴァイは視線をそらしたまま結局リリアの姿を見送らなかった。

見たら彼女を引き止めてしまいそうだったから。

側に置きたい、自分の目の届く所に置いておきたい。
リヴァイはリリアの笑顔が好きだ。しかしリリアを思うとどうしてもエルヴィンの姿がチラつく。

おそらくリリアもエルヴィンが好きなのだと分かっている。
兄としてもだし、男としても想いを寄せているだろう。
自分の側にいてほしいなど言ってはいけない、リヴァイはそう思っていた。

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