第19章 #19 死線を越えろ
突然の出来事に酒場の店主や客は動く事が出来なかった。
一体何が起きているのだろうか。
「どうもこの店から薄汚ねぇネズミの臭いがするなぁ。どチビとそのメスのネズミのよ……。見ぃつけた!!憲兵様が悪党を殺しにきたぜぇ?パンパァン!!」
ケニーが酒場の中に入ってきた。
しかしそこにリヴァイとリリアの姿は見当たらず、周りの客が固まっていた。
「なんだっ!!いねぇのかよ!!」
「ここだケニー、久しぶりだな。まだ生きてるとは思わなかったぜ。憲兵を殺しまくったアンタが憲兵やってんのか」
「ガキには大人の事情なんて分かんねぇもんさ。おっとすまねぇ、オメェはチビなだけで歳はそれなりに取ってたな」
リヴァイはリリアの状態を横目で確認した。
所々擦り傷はあるが、大きな怪我はないように見える。体調も心配だったが、切らした息は今までの移動の疲れから来る息切れのようだ。
「袋の鼠って言葉を俺は教えなかったか?これじゃあお前がどっから逃げようと上からドカンだぜ」
するとリリアがリヴァイの腕を突いた。
指差したそこにあるのは店に許可されている護身用の銃だった。
リヴァイが小さく頷く。
「なぁ、リヴァイ」
そう言うとケニーは近くにあった椅子をカウンターの内側に向かって投げ飛ばした。
椅子はカウンターのワインラックに当たり、何本ものワインが割れて破片が飛び散る。
リヴァイはリリアの頭を抱え自分に引き寄せ、割れた酒瓶の破片からリリアを庇った。
辺りに広がる酒の匂いにリリアが眉をひそめる。
「どうしてお前が調査兵になったか俺にはわかる気がするよ。俺らはゴミ溜めの中で生きるしかなかった、その日を生きるのに精一杯でよ。世界はどうやら広いらしいと知った日は、そりゃもう深く傷付いたもんだ」
リヴァイがリリアに人差し指で指示を出す。
銃を渡せ
リリアはゆっくり銃に手を伸ばし、それをリヴァイに渡した。