第18章 #18 動き出した王政
次の日の早朝、エルヴィンはある紙を見つめながら厳しい表情をしていた。隣からリリアもその紙を見ている。
それは王政からの通達だった。
調査兵団の壁外調査を全面凍結する事と、エレンとヒストリアの引き渡しを要求するものだ。
「ついに動き出したな」
その時だ。
ドアをノックする音が聞こえ、ハンジの班員である二ファが団長室に入ってきた。
赤髪の切り揃えられた髪が特徴的な可愛らしい少女だ。
「失礼します、エルヴィン団長、リリア兵長。ハンジ分隊長から伝言です。今朝、ニック司祭が殺害されました」
「っ?!何だって?」
「分隊長によると中央第一憲兵のサネスに拷問され死んだという事です」
「中央第一憲兵?なんで中央の奴らが?」
リリアが呟く。
中央第一憲兵団は王政直轄の憲兵団だ。
同じ憲兵団でもナイルのいる憲兵団とはまた違う組織だと考えてもいい。
その中央第一憲兵団が動いているという事はやはり今回の件は何か大きな秘密が隠されていると見ていいだろう。
するとエルヴィンは机に向かい、何かを紙に書いてニファに渡した。
「これを急ぎリヴァイに渡してくれ。リリア、お前も行きエレンとヒストリアを護衛しろ」
「分かりました」
「おそらく対人の戦闘が起こる可能性が高い。104期の新兵達は対人に慣れていない。お前がいた方がいいだろう。ただもし体調が悪くなったり激しい戦闘になった場合は戻ってくるんだ」
分かった、とリリアが頷く。
「さぁ、行け。おそらくもう少しでここにも憲兵が来る」
リリアとニファは急ぎ団長室を後にした。
一度リリアの部屋に行き立体機動装置を付け、コートのフードで顔を隠し兵舎を出た。
それとほぼ同時にナイルと多数の憲兵が兵舎へと入っていった。
おそらく先程言っていた通りエルヴィンを抑えにきたのだろう。