第16章 #16 巨人の正体
部屋に到着しドアを叩くと、中からどうぞと返事があり、リヴァイはドアを開けた。
入ってきたのがリリアでなく、エルヴィンは少し驚いたようだった。
リヴァイは預かっていた書類をエルヴィンに渡す。
「悪かったな、俺で」
「いや、リリアはどうした?」
「体調が悪いらしい、鼻血出して目眩と吐き気で座り込んでたぞ」
「何だって?」
エルヴィンが起き上がろうとするが、リヴァイが止めた。
「待て待て、テメェも怪我人だろうが、大人しくしてろ」
ベッドの隣に置いてある椅子にリヴァイが腰掛ける。
「頭打ったのが今頃影響出てんだろ。暫く休ませてやらねぇと。女型にぶっ飛ばされてからまだ日が浅すぎだろうが」
渡された書類にエルヴィンが視線を落とすが、リリアの事が心配で内容が入ってこない。
やはりストヘス区の病院に落ち着くまで残しておくべきだった。
「明日も来るとは言っていたが、無理かもな」
「……」
「ところでエルヴィン。テメェついに妹に手を出したそうじゃないか」
突然の問いにエルヴィンが顔を上げる。
「嫌な言い方だな。それにリヴァイには関係ないだろう?」
「……まぁな」
「自分でも分からないから確かめたかったんだ。リリアの事を妹として見ているのか、女性として見ているのか。まぁ、意識が飛んだから確かめるも何も無かったがな」
リヴァイからの返事はない。
「すまないな、リヴァイ」
「あ?」
「俺は結構独占欲が強いからな。お前にはあげたくない」
リヴァイが目を見開くと、エルヴィンは小さく笑った。
「何を…」
「長年お前とリリアを見てきたんだ。リヴァイが明らかに他の者とリリアの扱い方が違うのは分かっている。お前がリリアを見る目はとても優しい、行動も違う」
「俺は……別に」
「だからいつもリヴァイには安心してリリアを任せているんだ」
少しの間、沈黙が続いた。
リヴァイは何も言い返せない。しかしエルヴィンはリヴァイの気持ちを知りつつも、リヴァイの近くにリリアを置いていた。
それは本当に彼を信頼しているから。