第16章 #16 巨人の正体
「リヴァイに膝枕してもらっちゃった」
「仕方ねぇだろ。動かすなって言われて地面に寝かすわけにはいかねぇだろうが。吐き気は?」
「少しだけ、でも大丈夫」
リリアがゆっくり起き上がる。
少しだけクラクラするが歩けそうだ。
立ち上がろうとすると彼女の前にリヴァイが立ち、背中を向けてしゃがんだ。
「部屋まで連れて行く。書類は後で俺がエルヴィンに持って行くからお前は部屋で寝てろ」
リリアは申し訳なさそうに笑うと、リヴァイの背中に手を伸ばした。リリアを背負いリヴァイが立ち上がり歩き始める。
「ねぇねぇリヴァイはさ、お兄ちゃんの好きな人が誰か知ってる?」
「あ?」
「なんかね、いるみたいなんだよ、好きな人。それがね!私で練習しようとしてるんだから」
「練習?」
「自分の気持ちを確かめる、とか何とか…。お兄ちゃんって長年恋人とかいないでしょ?だからかなぁ、私への気持ちが揺らぐとか……私に遠慮してるのかなぁ?」
そりゃあお前、とリヴァイが哀れそうに息を吐いた。
リヴァイでも今の言葉で分かったエルヴィンの心情、言われた本人がまったく分かっていない事に少し同情した。
「なんだ、アイツ…ついに手を出し始めたのか」
「ん?」
「いや、どこまでその練習?したのかは知らねぇが大丈夫だったか?」
「別に何も。すぐにお兄ちゃん意識吹っ飛んじゃった」
ブッと珍しくリヴァイが噴いた。
「でもさ、なんか寂しい」
「寂しい?」
「お兄ちゃんが他の人に優しくするのがなんか……寂しい」
「……知るかよ」
リリアの部屋に着くと、リヴァイはリリアをベッドに降ろし、持っていた書類を取り軽く目を通す。
「これを持っていけばいいんだろ」
「うん、よろしくね。明日お兄ちゃんの所にピクシス司令が来るから私も行くね」
「あぁ?寝てろ」
「大丈夫だってば!」
言っても聞かないのがリリアだ、リヴァイもよく分かっている。呆れたように息を吐くとリリアの額を小突いた。
「迎えに来るから待ってろ。一人で行くなよ、途中で倒れられたら面倒だ」
「はぁい」
じゃあな、とリリアの部屋を出るとリヴァイはエルヴィンの部屋に向かった。