第16章 #16 巨人の正体
部屋を出て何歩か歩くとリリアは足を止めてエルヴィンのいる部屋を振り返った。
そっと唇に触れると少し悲しい顔をした。
キスされたのは嫌ではなかった、しかし昨夜のことをエルヴィンが他の人とするのかと考えると心の中がモヤモヤする。
「お兄ちゃんの好きな人か……どんな人なんだろ」
リリアは頭を振ると考える事をやめた。
今はエルヴィンが休んでいる間しっかりと代わりに仕事をしなければ。
予想通り、団長不在の為に仕事は補佐であるリリアの元にやってくる。
書類の目通しや確認、兵団の補給資源確保やその他諸々、ある程度区切りがついたところでリリアは部屋の外へ出た。
通路を歩いていると気持ちの良い風が顔を撫でる。
リリアが立ち止まり深く息を吐くとポタッと足元に血が落ちた。
リリアが目を丸くし驚いた。
もしや頭の怪我がまた開いたかと頭を触るが大丈夫そうだ。
しかし目眩もする。
女型の巨人捕獲からまだ数日、リリアの体も全然回復などしていないのだ。
リリアは通路の端によると座り込んだ。
目眩がだんだん酷くなり立っていられない。
「おい、リリア。どうした」
声を掛けたのはリヴァイだった。
座り込んだリリアの肩を掴み、顔を覗く。
「大丈夫か?鼻血出てるぞ」
「えっ…これ鼻血か……目眩がするの」
「お前、頭打ってんだからもう少し安静にしろ」
リヴァイがリリアを抱きかかえようとするがリリアが止めた。
「あー……リヴァイ待って。動かさないで気持ち悪い」
するとリヴァイは地面に座り足を組むとリリアの頭を太腿の上に乗せて体を横にさせた。
ポケットからハンカチを出しリリアの鼻を押さえる。
「どっか悪くなってんじゃねえか?骨は折れなかったが頭にきてるな。そっちの方がタチが悪い」
「………」
「おい、大丈夫か?」
「うん。でも頭がクラクラする」
リヴァイはしばらくリリアが落ち着くまで待った。
次第に鼻血は止まり、リリアの目眩も軽くなったようだ。
リリアが閉じていた目を開けると上から見ているリヴァイと目が合った。