第16章 #16 巨人の正体
「おはよう、お兄ちゃん。気分はどう?痛みは?」
朝になり、エルヴィンが目覚めるとリリアが顔を覗かせた。
「……あぁ、少し痛いくらいだ、大丈夫」
エルヴィンは起き上がりリリアを見つめた。
昨夜はとんでもないところで意識が飛んでしまった。
しかも何故いきなりあんな事をしてしまったのかエルヴィンにも訳が分からない。
「リリア……」
「ん?」
「いや…昨日はすまなかった」
「謝る事はないけど……お兄ちゃんの気持ちは確かめられたのかな……なんでその……先日も思ったけどさ私なんかで練習しちゃダメだよ!!」
「……は?」
リリアはエルヴィンの手をギュッと握り、うんうん、と頷いた。
「好きな人がいるんでしょ?なら私で練習してる場合じゃなくて直接本人に伝えなきゃダメ!!」
「………」
あぁ、これは完全に勘違いをされている。
リリアへの気持ちが揺らぐ、自分の気持ちを確かめたいと言ったはずなのに、確かに言った筈なのに、何故か昨日の出来事が好きな人への予行練習と思われていた。
「あ、そうだ。昨日の夜にリヴァイが来て負傷者の確認終わったって。エレンも特に問題はないみたいだよ」
「そ、そうか、分かった。ありがとう」
「ニック司祭は身元を隠して兵舎で保護してる。それはハンジに任せるつもり。お兄ちゃんは今日は特に予定はないから、ゆっくり休んでね。明日はピクシス司令が来るって事だから」
リリアが立ち上がる。
「じゃあ私は戻るね。一応エレンの硬質化の実験の予定を組んでおくよ。決まったらまたお兄ちゃんに確認するから」
「あぁ」
「また来るね!!」
一旦部屋を出ると、再びリリアがひょっこり顔を出した。
「お兄ちゃん!ファイト!!」
「?」
リリアはグッと握り拳を見せると再び部屋を出ていった。
「……何か凄い勘違いをされたな…」