第14章 #14 この心臓は貴方の為に
「リリア、体は平気か?」
「え?うん、痛みはあるけど……我慢は出来る」
エルヴィンは棚の中から薄手の毛布を出しリリアを包んだ。
「???」
「やはり一緒に連れて帰る。説明は道中リヴァイにでも聞いてくれ。と言ってもリヴァイ達はエルミハ区までだが」
そう言うとエルヴィンはリリアを抱き上げ部屋を出た。
「お、お兄ちゃん?」
「置いていきたくない……すまないが荷馬車は揺れて痛むだろうが我慢してくれ」
「う、うん」
エルヴィンは急いで門の前に行くと、後方にいる荷馬車にリリアを乗せた。
すでにそこに乗っていたエレン、アルミン、ミカサ。そしてハンジとリヴァイ、エルミハ区まで連れて行くというウォール教のニック司祭がリリアを見た。
「えっ?リリア兵長!?体は大丈夫なんですか?」
アルミンが驚きの声を上げる。
「おい、エルヴィン。これはどういう事だ。コイツは暫くストヘス区に置いておくんじゃなかったのか?」
「すまない、事情が変わった。リリアもトロスト区に連れて帰る。今までの経緯を説明してあげてくれ。じゃあリリア、エルミハ区に着いたら荷馬車を変える。痛みは我慢しなさい」
「うん」
エルヴィンはそう言うと早足で先頭に向かった。
するとハンジがリリアを覗き込む。
「その様子だと仲直りした?」
「した!!勝った!!」
「そうかー!!勝ったかー!!やるじゃないかリリア!」
「おい、訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇ。一体どうやってエルヴィンを説得した。俺達が言っても聞く耳も持たなかったヤツを…」
リリアは苦笑いをする。
人類のためとは建前で、2人共自分の夢のためにやっているだなんて……とても言えない。
すると前方からエルヴィンの声が聞こえてきた。
「ウォール・ローゼの状況が分からない以上、安全と言えるのはエルミハ区までだ。そこで時間を稼ぐ、行くぞ!」
その合図と共に皆が移動を始めた。