第14章 #14 この心臓は貴方の為に
「はぁ……時間だな」
「ん?」
「リリア、お前が寝ている間に色々あってね、俺は今からトロスト区へ戻る」
「えっ……もう離ればなれ!」
エルヴィンが苦笑いをしながらリリアの頭を撫でる。
「すまない、時間がない。お前はもう少し休んでから戻って来なさい」
「あ、うん……気を付けてね」
「……リリア、目を閉じて」
「ん?」
「早く」
言われるままリリアは目を閉じた。するとエルヴィンがリリアの顎をグッと上げキスをした。
驚いたリリアが目を開く。
今までエルヴィンは頬や額にキスをする事はあったが、唇にした事は一度もなかった。
リリアは顔を真っ赤にするとエルヴィンの胸元をトンッと押した。
「?」
「お、お兄ちゃん……私の…ファーストキス奪った…」
「……は…あっ!?え…!!」
エルヴィンまでもが顔を赤くする。
つい自分の欲に負けキスをしてしまった。ほぼ無意識だ。
リリアは顔を手で覆い、小さく呟いた。
「私…ファーストキスした人と結婚するって決めてるんだからお兄ちゃん責任とってよね」
「けっ……結婚?!す、すまなかった!ちゃんと責任は取っ……」
「冗談だよ」
エルヴィンが目を丸くし口を開けたまま固まった。
「結婚は冗談!私とお兄ちゃんは兄妹なんだから結婚出来るわけないでしょ。だから今のはノーカン!!ほら、行ってらっしゃい」
「待て!ならお前は一体誰と結婚すると言うんだ!」
「はぁ?」
エルヴィンは一体何を言っているのか。
「どうでもいいから早く行って」
「どうでもよくないだろう?!お前の人生に関わる大事な…」
「私の人生より今は巨人!!ほら!!団長!行ってらっしゃい!!」
リリアに押され、エルヴィンは渋々部屋を出ようとドアの前に立った。
しかしエルヴィンは立ち止まって何かを考えている。
リリアが首を傾げてその後ろ姿を見つめていると、エルヴィンは振り返り再びリリアの前まで戻ってきた。