第14章 #14 この心臓は貴方の為に
その直後、バランスを崩したリリアがフラつき、後ろに倒れそうになった。
慌ててエルヴィンが手を伸ばしリリアを抱き止め、そのまま力一杯抱きしめる。
「バカ……」
エルヴィンはゆっくり離れるとリリアをベッドに座らせた。
「俺の……負けだ」
優しく微笑むエルヴィンを見て安堵したのか、ドッとリリアの瞳から涙が溢れた。
嗚咽を漏らし、肩が上下に揺れる。
「うっ…うっ……うぅぅ…」
「リリア?」
「うわぁぁぁん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!ごめんなさい…ごめんなさい!!約束やぶってごめんなさい…私の事嫌いにならないで…私を1人にしないで……捨てないで…!!お兄ちゃあぁん!!」
エルヴィンは目を丸くし、慌ててリリアを再び抱きしめて背中を叩いた。
「だ、大丈夫だ!捨てたりなどしない!!すまない……酷い事を言って…。傷付いたよな……何とか俺から離れてほしくてあんな…心にもない事を…」
「嫌だ……離れたくないよぉ…うぅぅぅ…うー!!」
「分かった、分かったから…!どうか泣き止んでくれ……」
エルヴィンに抱きしめられ、少しずつ落ち着いていくリリア、エルヴィンはゆっくり離れると近くに置いてあったタオルを取り、リリアの顔を拭いた。
「いた…痛い」
「我慢」
涙を拭き終えエルヴィンはリリアの頬に優しく触れた。
「叩いて悪かった……痛かったな」
「いや、それがいい位置を平手打ちするから全然痛くなくて」
「それでも叩いたのはダメだった。すまない」
「むしろ胸ぐら掴まれた方がショックでした。絞まって苦しいのなんの」
エルヴィンがあぁ、と項垂れた。
リリアを遠ざけるためとはいえ、大事な妹になんて事をしてしまったのか。
「相当みんなに怖い団長のイメージが付いちゃったね、残念」
「他人にどう思われようとどうでもいいが、本当に最低な事をしてしまった」
するとエルヴィンは思い出したかのように時計を取り出し時間を確認した。