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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第14章 #14 この心臓は貴方の為に



「……お前は、俺の駒になるには優しすぎる。そして俺も…お前に甘過ぎる。上手くリリアを使っていながら肝心なところでお前を心配して駒を止める」
「お兄ちゃん?」
「お前を……リリアを駒に使うには……俺の覚悟が足りない。だからもう…調査兵団を辞めて家に戻ってくれ」

リリアは目を見開いてエルヴィンの手を握り、力を振り絞って起き上がった。
エルヴィンはリリアの方を向かない、いや、向かないのではなく向けないのだ。

今リリアを見たら泣いてしまいそうだから。


「お兄ちゃん」
「大事なんだよ…失いたくない。だからもう俺の側にいないでくれ」

死なせたくないから必死に止めた。しかしリリアはエルヴィンに逆らってボロボロになるまで戦った。
巨大樹の森から帰ってきた時も、今回の捕獲作戦の時もリリアを失う恐怖が大きかった。
夢を叶えるため、彼女を駒として扱うにはあってはならない感情、だからもういっその事こと、側にいないで安全な場所で過ごしてほしい。

「だから最初から……調査兵団に入れるのは嫌だったんだ…俺には無理だ、お前にもしもの事があったら…」
「私の夢はお兄ちゃんの夢を叶える事だよ。気にしないで私を使って…」
「だから!!それが嫌なんだ!!どうして分かってくれない!」

するとリリアがエルヴィンの手を自分の左胸に押し当てた。


あの時と同じ様に……


エルヴィンは固まり、リリアを見つめた。

「もう二度と!!二度と貴方の命令に反きません!私の心臓は貴方に捧げた物……だからお願いします。側にいさせて……貴方の命令しか聞かない」
「……どうして俺に執着する…」
「お兄ちゃんしかいないから!!」

リリアの目は力強いものだった。

「私を救ってくれた貴方に……恩返しがしたい。家族にしてくれた貴方の……夢を叶えたい。もう絶対に、絶対に逆らったりしません…側に置いて下さい……お願いします」

リリアはエルヴィンから手を放すと、フラフラとベッドから降り、エルヴィンの前に立った。
そして自分の右手を心臓に当て、敬礼をした。
エルヴィンが目を見開く。


「エルヴィン・スミスに心臓を捧げます!!」


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