第14章 #14 この心臓は貴方の為に
辺りはもう暗くなっていた。
外では兵士達がバタバタと走り回っている。
「団長、あと10分で出発します」
「分かった」
部屋の外から掛けられた声に、エルヴィンは一言そう返した。
目の前には眠ったままのリリア、あれからすぐにリリアは病院に運ばれ治療を受けた。
幸い骨折はしておらず、頭の傷が開いただけだった。
様子を見にくるつもりはなかったのだが、つい心配になり来てしまった。
相当泣いたらしい、リリアにとってつらい言葉をたくさん口にした。
今は落ち着き眠っている。
エルヴィンは椅子に座るとリリアの手を握った。
温かい……生きている…
するとリリアがゆっくりと目を開け、それに気付いたエルヴィンがサッと手を離した。
「……お兄ちゃん?」
「………」
「……怒ってる?」
エルヴィンは小さく息を吐いた。
「怒ってる」
「だよね」
リリアは起き上がろうとしたが、体が動かなかった。
起き上がるのを諦めたリリアはエルヴィンを見上げる。
「お兄ちゃん、私……」
「落ち着いたら荷物をまとめて家に帰れ」
「……」
「俺にお前はもう必要ない」
いつもとは違う強い口調、命令に反いたのだから仕方がないがリリアにはあまりにもつらい。