第12章 #12 女型の正体
その頃、リヴァイの言う通りエルヴィンは馬屋にてリリアを待っていた。
彼がここにリリアを連れてくるのも分かっている。
「団長、その…リリア兵長の事、大丈夫ですか?」
アルミンが心配そうに声を掛ける。
いつも離れる事のないあの二人があんな言い合いをするとは思ってもいなかった。
エルヴィンはアルミンを見ると苦笑いをした。
「気にするな。ただの兄妹喧嘩だ」
「あの……失礼ですけど、団長とリリア兵長はかなり年齢が離れてますよね。団長は父親が早くに亡くなったと聞きました。リリア兵長は…本当に団長の妹ですか?」
おい、とジャンがアルミンを止める。
先程の病室での二人の雰囲気といい、仲が良い兄妹としては少し違うような気がしていた。
「妹だ」
「そうですか…失礼しました」
「戸籍上はな」
アルミンとジャンが目を見開く。
その後ろでミカサは静かに3人を見ていた。
「血は繋がっていない。戸籍上だけの妹だ」
「えっ…」
「昔、リリアは貧しい家の出身で、その貧しさ故に両親から酷い虐待を受けていた。ろくに食事も貰えず、暴力を受け、もうボロボロだった。その場に…本当にたまたま通りかかったんだ、私が…本当にたまたま…」
思い出すようにエルヴィンは目を閉じた。
「もう消えてしまいそうな声で、リリアは私に助けを求めた。助けて、と」
「それで引き取ったんですか?」
「あぁ…あのままだと本当に死んでしまいそうだったからね。あの子は本当に良い子だ。心を開くと素敵な笑顔を見せてくれる。手放したくなくなった。だからそのまま引き取った」
エルヴィンは3人を見つめた。
「もしあの子が私の制止を聞かず、捕獲部隊と行動を共にした場合は……」
「……」
フッとエルヴィンが笑った。
「見守ってあげてくれ」