第12章 #12 女型の正体
「痛いよ…」
「あ、すまない。頭、怪我があったな」
エルヴィンは頭から手を離すと少しリリアから離れ、優しく頬に触れた。
気持ち良さそうに擦り寄るリリアに、エルヴィンの胸がドクンと高鳴る。
触れたい、もっと…
しかしこんな感情を持っていいのか、リリアは妹なのに……。
頭の中でグルグルと葛藤したが、体は待ってくれなかった。
エルヴィンがゆっくり顔を近付ける。
リリアは動かずエルヴィンを見ていた。
このまま近付けば唇が当たる、その直前だった。
「何でそれを早く言わなかったんだよ!」
「だって何かの間違いかもって思って…!」
「いいからホラ!着いたよ!エルヴィーン、アルミンが話があるって………あ、コンコン」
入ってきたのはハンジとアルミン、ミカサとジャン。
4人はエルヴィンの後ろ姿しか見えていないが、何となく察しはついた。
一番入ってはいけない時に入ってしまった、と。
「……ハンジ、お前はいつもノックと入ってくる順番が逆だ……」
「ごめぇん!兄妹の熱い抱擁中だったね!」
抱擁?どこが?とアルミンとジャンがハンジを見つめ、ミカサはジッと真っ直ぐにエルヴィンとリリアを見ていた。
「リリア、具合はどう?痛みは?」
「凄く悪いよ、体を少し動かすだけで痛いし」
「で、ハンジ。何か用か?」
「リリアのお見舞い!!と、アルミンが女型の正体が誰か心当たりがあるそうだよ」
エルヴィンとリリアが目を見開く。
「何だって?」
「確証はないんですけど…」
ハンジ、アルミン、ミカサ、ジャンはリリアの横に椅子を付けると彼女を囲うように座った。