第12章 #12 女型の正体
「女型はどうなった?」
「捕獲は出来なかった。作戦は失敗だ。それと…リヴァイから話は聞いた。仲間の遺体を連れて帰れずすまなかった」
思い出される記憶、そうだ、巨人から逃れるために死んだ仲間の遺体を捨てる事になってしまった。
その中にはリヴァイ班の皆の遺体も含まれていた。
「……仕方ない……みんなが逃げ切るにはそれしかなかった。私の方こそ…やめてなんて……リヴァイだってつらかったはずなのに…」
リリアが俯く。
「そして俺は……お前も見捨てた。リヴァイはギリギリまで俺が命令さえすれば探しに行くと言っていた。だが俺は探さなかった。お前の命を……見捨てた…」
握られた手にギュッと力が入る。
エルヴィンはあの判断を後悔しているのだろう。
兄として。
しかし彼は調査兵団の団長なのだ。時には家族を捨てより多くの兵士を生き残らせる判断をしなくてはならない。
それはリリアもちゃんと理解している。
「正しい判断だよ。私一人の命と団員の命、背負っている団長なら団員の命を守るべきだもの。それに、私は調査兵団に入ったからにはいつ自分が死んでもいいよう覚悟は出来てる。お兄ちゃんは正しいよ」
「リヴァイに言われた。血が繋がっていないから助けにいかないのか、と」
「……リヴァイ……あのバカ…」
「そして俺は、例え血が繋がっていても、リリアを探さないと返した…」
リリアは柔らかく微笑み、エルヴィンの手を握り返した。
やはり兄としての、家族としての決断を今更ながら後悔している。
「分かってる、分かってる。お兄ちゃんは全然間違っていない。…大丈夫だよ!!だからそんな顔しないで、ね?」
「生きていたからこんな事が言える…リリアがもし今ここにいなかったら……一生悔いた…」
エルヴィンはリリアを抱きしめる。
その体はわずかに震えているようだった。
「お兄ちゃん……私が小さい頃、壁外調査から帰ってきたお兄ちゃんに泣きながら飛び出していった気持ちが分かった?」
「………よく分かった」
「こんなにも心配で、怖くて堪らなかったんだよ。思い知ったか」
エルヴィンが苦笑いをする。そして抱きしめたままリリアの頭を撫でた。