第93章 失踪ルート#03 落胆
「エレンは未来を変えられないって言ったよね」
「はい…」
「どんなに足掻いたって無理だって」
「はい……」
「だからここで私を返したって未来は変わらないと思うよ」
「いいや……」
エレンが少し厳しい視線でリリアを見つめる。
しかし今にも涙が溢れてきそうな程に瞳が潤んでいた。
「ここでリリア兵長に怪我をさせて置いていけばまだ……」
「エレン」
「でも!!!」
エレンは両手で覆うように目を隠した。
必死に涙がこぼれないよう耐えている。
「リリア兵長に側にいてほしい自分もいて……ここで突き放さなきゃ本当に……兵長の未来は変えられなくなる…」
リリアの最後を知っている、それをもしかしたら回避出来るかもしれない、なのに自分のエゴでやはり未来を変える事が出来ずにいる。
「エレンはズルいなんて言ったけど、そんな事ないよ」
「リリア兵長…」
「ここにいるのは私の意思だからね。それに私が死ぬのはまだ先でしょ?」
エレンが頷く。
「ここで私を返してもエレンの目的を聞いた私はまたエレンの元に戻ってくるよ」
「……リリア兵長」
「目指す未来は…そんな生きる自由を奪われないものになるように…今はその決められた道筋に従いましょう」
「……必ず……ごめんなさい…」
リリアはエレンの頭を撫でた。
「戦争に行くんだから気を付けて、というのは無理なのかもだけど……ちゃんと待ってるから」
「はい……必ず戻ります」
宿屋から出た二人、エレンはこのまま中東の戦争へ、リリアは一足先にレベリオのエルディア人収容区の病院へ向かう。
エレンが足を進める途中振り返ると、手を振り見送るリリアの姿があった。
彼の姿が見えなくなるまでリリアはずっとエレンを見送り続けた。