第11章 #11 叶わなかった約束
しばらく歩くとエルヴィンが足を止めた。
するとリヴァイがエルヴィンの真後ろに立ち、小さな声で話しかける。
「エルヴィン、本当にもういいのか?リリアはおそらくまだ森の中だ。奇行種が来なければ今の俺でも行ける。お前が命令すれば俺は行くぞ」
「森のどこにいるかも分からないのだろう?無謀だ」
エルヴィンが再び歩き出すと、リヴァイは歯を噛みしめてエルヴィンの腕を引いた。
「エルヴィン!命令しろ!!俺は行ける!」
「しつこい」
振り返ったエルヴィンの表情は無表情だった。
エルヴィンの立場は分かっている。
例え身内といえど、たった一人の命と大勢の兵士の命を天秤にかけるわけにはいかない。
これはリヴァイのエゴだ。
しかしリヴァイはエルヴィンが最も嫌う言葉を口にした。
「…血が繋がってないからか……アイツが本当の妹じゃねぇからか…」
エルヴィンとリリアは兄妹だ、戸籍上は。
見た目も金髪に碧眼と似ている、ぱっと見は兄妹と言われれば誰もが信じるだろう。
しかし本当は血の繋がりはない兄妹なのだ。
あまりこの事を知っている者は少ない。
知っているのはエルヴィンと親しい者だけだ。
「例えば血が繋がっているとしても、俺は同じ事を言う。リリアはこうなる事は覚悟して調査兵団に入った。身内だからと言って特別な事はしない。出発する」
「………そうかよ。了解した」
リヴァイは舌を打つとエルヴィンを通り過ぎ、その後ろ姿を見ていたエルヴィンは拳を握る。
"お兄ちゃん、私を家族にしてくれてありがとう"
そんなリリアの言葉が脳裏をよぎった。