第11章 #11 叶わなかった約束
「ほぼ終わりました。回収不能が5体ほどありましたが」
「一部でも無理か」
「巨人のせいで回収できない者以外は……あれならばむしろ持ち帰らないほうが遺族のためかと……」
エルヴィンはほぼ完了したという死亡者、行方不明者のリストを団員のペールから渡され、それに目を通していた。
その行方不明の中にリリアの名前が記されている。
自分の家族の名前をここで見ることになるとは。
先程まで自分の隣にいたはずなのに。
「行方不明で処理しろ」
「はい。巨人は森の周辺で数体確認しましたが、こちらに向かってくる者はまだいません」
「直ちに移動だ。各班に伝えろ」
「はい」
エルヴィンがその場を離れようとしたその時だ。
「納得いきません!!エルヴィン団長!!」
その声にエルヴィンが足を止めて振り返る。
兵士であるディターとユルゲンがエルヴィンを呼び止めたのだ。
「回収すべきです!イヴァンの死体はすぐ目の前にあったのに!」
「巨人がすぐ横にいただろう!2次被害になる恐れがある」
ペールが慌ててディターを止める。
「襲ってきたら倒せばいいではありませんか!!」
「イヴァンは同郷で幼馴染みなんです!アイツの親も知っています。せめて連れて帰ってやりたいんです!!」
ディターとユルゲンが幼馴染みであるイヴァンの遺体を回収するように訴えるが、エルヴィンは全く表情を変えない。
「ガキの喧嘩か」
後方からそれを見ていたリヴァイが声を掛けた。
「死亡を確認したならそれで充分だろう。遺体があろうが無かろうが、死亡は死亡だ。何も変わるところはない」
「そんな……」
「イヴァン達は行方不明として処理する。これは決定事項だ。諦めろ」
そう言い放つと、エルヴィンとリヴァイはその場から離れた。
ディターとユルゲンは納得いかない。
目の前に仲間の体があるのだ、体だけでも連れて帰りたい。
「お二人には……人間らしい気持ちというものがないのですか!!!!」
「おいっ!ディター!!言葉が過ぎるぞ!団長も……リリア兵長の行方が分からないんだぞ?!生きているかも死んでいるかも分からないままなんだ!!」
「ペール、やめろ」
振り向かないままエルヴィンは呟き、そして再び歩き出した。