第1章 不良少年とビッチ(?)なあの子
からかいたくて、構いたくて仕方ない。
今後、私は彼のいない生活に戻れるのか、不安しかないな。
放課後の騒がしさが訪れ、帰る為に教室へ向かう。
一緒にいた二郎は、私を気にしながらも、友達とどこかへ行ってしまった。
教室の生徒がだいぶ少なくなっていて、目立たずに帰れそうだと思い、自分の机に足を向けた。
「ねぇ、ちょっと」
帰る準備をしていると、声をかけられる。
見ると、知らない子が数人私の机を囲んでいた。
「あんたさ、二郎君とどういう関係なわけ?」
「最近よく一緒にいるよね? まさか、二郎君にまで手出すつもり?」
「二郎君があんたみたいなビッチ、本気で相手すると思ってんの?」
「調子乗んなよ、クソビッチ」
ビッチビッチうるさいな、と思いながらも、ただ黙って彼女達を見ていると、睨んでいる一人の女子と目が合う。
彼女は、二郎によくベタベタしてるのを見る。
人気者の二郎には、女の子がよく寄って来るけれど、彼女の態度は別格で、ファンというより明らかな好意が滲み出ている子だ。
やっぱり私は彼女達にしたら、邪魔でしかないんだろうな。
でもさすがに彼女達に私を責める権利はないし、どの立場で好き勝手言っているんだろう。
普段は大して気にしないのに、この日は何故かイラッとしてしまった。
「あのさ、あんた達二郎の彼女か何かなの?」
彼女達の顔が不思議そうな表情になる。
「彼女ならまだしも、そうじゃないのにどうして私が文句言われてるのか、教えてもらえる?」
私の態度が気に入らなかったのか、その中の一人が私の腕を掴む。
「ちょっと来いよっ!」
力を貸すように、他の女子にも引っ張られ、私は校舎裏の倉庫に連れて行かれる。
もちろん、その様子を見た生徒達の中に、私を助けてくれるような希少な人などいるわけもなくて。
私は有名な噂の“クソビッチ”だから。
抵抗する事なく、私は倉庫の中で思い切り突き飛ばされて、後ろに倒れる。
使わなくなったマットが引いてあって助かった。危なく地面で頭を打つところだった。
「マジでお前、生意気っ!」
「ぐっ!」
思い切り蹴られて、呻く。
お腹は辛うじて守った。さすがに内蔵に何かあっては、笑えない。