第3章 二人の距離……交わる想い
何を話してるのか聞こえないけど、二郎の顔が突然真っ赤になった事で、何となくいらない事を言ったのだという事だけは分かった。
電話の後、二郎に内容を聞いたけれど、たっくんに何か言われているはずなのに、頼まれてここに泊まる事になった以外の事は言わなかった。
「お兄さんに何か言われない?」
「だ、大丈夫だ。荷物取りに、一回帰ってくる」
知らない間に、二郎が泊まる事になっていたけど、その後に来たたっくんからの〔楽しめ、娘よ〕のメッセージで、何となく話が見えた。
自らそんな事を言う保護者も珍しい。
まぁ、信用してくれているのだろうと、いい方に考えよう。
日も落ちて、部屋を片付けてベッドを整え、お風呂の用意を済ませた頃、インターホンが鳴った。
ドアを開けて、二郎を招き入れた。
「お前さ、昼も思ったけど、いつもドアすぐに開けんの? 確認しろよ、危ねぇだろ」
「あはは、普段あんまり人来ないし、来るとしても私よりたっくんが出るし、たっくんの彼氏とかしか来ないから」
「だとしても……は?」
「ん? 何?」
目を丸くしている二郎を、不思議に思って見る。
私は、今何か変な事でも言っただろうか。
「お前今しれっとエライ事言ったぞ?」
「そう? エライ事……何だろう」
本当に何の事を言っているのかが、全く分からない。
「まぁ、いいか……」
頭を掻く二郎を、先にお風呂へ促す。
その間に、昼間のカレーの残りを使って晩御飯を作る。
二郎の好物は、事前に一郎さんに確認済みだ。
お風呂から上がった二郎が、普段より一段と色っぽく見えて、心臓が跳ねた。
そして、二人でまたご飯を食べて、片付けが終わった後、私はお風呂へ向かう。
二郎がその気かどうかは正直分からない。けど、いつもより念入りに体を洗う。
二郎は分かっているのだろうか。私が初めてだという事に。
たっくんに「お前はどっからどう見ても、処女に見えねぇ」と言われた事がある。
私のせいじゃないだろうに、失礼な。
お風呂から上がって、冷蔵庫へ向かうとソファーに凭れて、テレビに向かう二郎が見える。
水を飲んで、落ち着かない心臓を落ち着かせるように、深呼吸をする。
「何見てるの?」
「えっ!? あ、べ、別にっ……」