第3章 二人の距離……交わる想い
手土産のケーキを冷蔵庫にしまって、お茶を用意する。
「何か、手伝おうか?」
「お客様なんだから、ゆっくりしてて」
お茶を出し、二郎をソファーに座らせる。
キッチンに戻り、調理を再開する。
話をしながらカレーも出来上がるのを待つだけになった頃、振り向こうとした私を背後から、二郎の手がお腹辺りに回って抱きしめられる。
「あんま考えた事なかったけどさ、今日の格好……なんかいいな……クルものがあるわ」
「ははっ、何それ。お気に召して頂いて何よりです」
顔だけ二郎に向けると、そのままキスをされる。
啄むように唇を挟むようにされ、それが深いものに変わり、唇が一瞬離れたのを合図に、向き合う体勢になってまた唇が触れた。
早く動く鼓動に、二郎の首に回した手に力が入る。
カレーの鍋のグツグツ言う音と、二人の舌が絡まる音が静かな部屋に聞こえて、興奮が高まる。
いい香りがして来て、二人の唇が離れた。
「お腹、空いてる?」
「だな。せっかくが作ってくれた初手料理だし、食いたい。食おうぜ」
ちゅっと最後に一度キスをされ、二人で出来上がったカレーをよそってテーブルへ運ぶ。
向かい合って座り、食べ始める。
二郎がカレーを口に入れるのを、見つめる。
「うまっ!」
「よかった。ちょっといつもと入れる物が違うから、心配だったんだよね」
「めっちゃ美味いっ!」
喜んでくれているようで、美味しそうに次から次へと口に運ぶ二郎を見て、私もカレーを食べる。
食べ終わり、他愛のない話をしながら片付けを始めた。
洗い物を手伝ってくれ、二人で並んで食器を片付ける。
一段落して、二郎がオススメしてくれたアニメを見ながら、二人でまったりと過ごす。
アニメは普段見ないけれど、なかなか面白くて、夢中になって見ていると、スマホが鳴る。
たっくんからだ。
「もしもし、どしたの?」
『おぉ、今日泊まりだから帰れないけど、お前大丈夫か?』
「うん、一晩くらい大丈夫。ちゃんと戸締りもするよ」
たっくんの少し心配そうな声に、安心させるようにいつもより明るめの声を出す。
『そうだ、今日アイツ来てんだよな? ちょい代わってくんね?』
スマホを二郎に差し出すと、不思議そうに受け取る。