第3章 二人の距離……交わる想い
そればかりが付き合うって事じゃないし、今でも十分幸せだけど、だからといって、ずっと何も無いのも寂しいわけで。
性欲は男性ばかりがあるわけじゃない。女にだってあるものだから。
お昼休み、相変わらずサッカーに明け暮れる彼等を、ベンチから見ている。
今日は少し暖かいから、眠くなってくる。
喉が渇いて、ペットボトルのドリンクを喉に流し込むと、気分が少し晴れた。
本当に楽しそうにサッカーをする二郎が無邪気で、可愛くて笑ってしまう。
チャイムが鳴り、ボールを持って戻ってくる彼等に、ドリンクを渡す。
汗と砂がついた頬を拭ってあげると、二郎は嬉しそうに笑って「サンキュー」と言う。
「いいな……」
「うん、羨ましすぎる」
「俺も彼女欲しい……」
「砂ついて払うくらいでいいなら、してあげるけど……」
「「マジでっ!?」」
笑いながら言うと、二郎が後ろから私の首に腕を回して引き寄せた。
顔だけ二郎に向けて見上げると、拗ねたみたいな顔で私を見る。
「いくらダチでも、お前は俺のだから駄目」
「ふふっ、はいはい」
二人の時間の他に、この時間も私は気に入っていて、最近は凄く毎日楽しい。
ほんとに、何もかもが二郎のおかげだ。
だから、私も二郎に何かしたくて、どうすればいいのかを考えている。
「じゃ、カレー作って」
「カレー?」
「うん、カレー」
どこまで可愛んだろう、彼は。
というわけで、日曜日に我が家でカレーを振る舞う事になった。
そして、まるで示し合わせたかのように、その日はたっくんが不在という、チャンスなのか何なのか、複雑だけど、今日は少しでも二郎の中を進めたいとか思ってみたり。
料理は嫌いじゃない。最近は少しアレンジもし始めて、たまにたっくんと二人で色々挑戦してたり。
準備の為、買い出しを済ませて、作り始める。
あまり手の込んだものより、二郎は多分シンプルなものの方がいいかと考えながら、今回は普通に作る事にした。
髪を後頭部辺りで結び、エプロンを付ける。
食材を切りながら、自然と鼻歌が出る。
その時、チャイムが鳴った。
「はーい。二郎、早いね」
玄関を開けると、二郎が立っていた。約束よりだいぶ早くて驚いた。