第3章 二人の距離……交わる想い
いくら人がいないとはいえ、こんな道のど真ん中でと思うものの、拒む事はしない。
名残惜しそうに、離れた唇が改めて軽く触れ、離れた。
「はぁ……離れたくねぇ……」
「はははっ、明日学校で会えるでしょ」
たまにこうして甘えたような顔で見られるのが、私は気に入っている。
けれど、少し前から熱い視線を感じていた。
二郎は気づいていないみたいだけど、割と気まずい。
「……何してんの?」
「ん? ああ、我が子の青春のお裾分けを……」
「我が子って……たっくん、独身でしょうが……」
「ぅわあぁっ! い、い、いつからっ……」
今頃気づいたのか、二郎は驚いて飛び退いた。
煙草を咥えながら、コンビニの袋を持って壁に凭れ掛かっている。
「最近の若いのは情熱的だねぇ、羨ましいったらないよ」
思ってるように聞こえない声で言う。
「離れたくねぇ気持ちも分かるけど、もう遅せぇから散れ散れ」
二郎は仕方なく私から離れて、たっくんに軽く頭を下げて帰って行った。
たっくんと並んで歩きながら、スマホが震えるのを感じて取り出すと、二郎だった。
こうして直ぐに連絡が来るところも愛しい。
「おーおー、嬉しそうな顔しやがって……」
「うん、嬉しいよ」
「……ふっ、そーかよ」
ぶっきらぼうなのに、優しい顔で笑うたっくんが、短くなった煙草を消す。
「で? もうヤったか?」
「……言い方」
何に対してもストレートな人だから、仕方ないけどもっと他に言い方はなかったのだろうか。
「仮にも育ての娘に、そういう事聞く?」
「大事だろ」
また煙草に火をつけて、煙を吹き出した。
「してないよ。特にそういう事して来ないから」
「ほー、健全な男子高校生にしては、珍しいな。しかもお前相手に」
そんな変なオーラ出てるのだろうか。人を性のシンボルみたいに言わないで欲しい。
たっくんは、私の頭にポンッと手を置いて、優しく笑う。
「幸せか?」
「うん」
「そうか……。大切にしてもらえ」
俺はお役御免だなと、少しだけ寂しそうな気がした。
付き合い初めて数週間、デートは何度もしたし、二郎の家にも行ったし、うちにも来た。
なのに、本当に二郎は私に手を出して来ない。
いまだにキス止まりだ。