第3章 二人の距離……交わる想い
確かに、こんな所で初めてなんて、落ち着かない。
深呼吸しているのか、二郎の息遣いが聞こえる。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫だ……気にすんな……」
先程より力を込めて抱きしめられる。
私はそのまま動かず、素直に抱きしめられたままでいる事にした。
二郎の深呼吸が聞こえなくなった頃、私もだいぶ落ち着いた。
「大丈夫? 何か、ごめんね?」
「ん、まぁ、何とか。つか、何でお前が謝んだよ。お前のせいじゃ、ねぇ……」
何故二郎が辛そうに深呼吸をしていたのかは、何となく想像はつくし、半分は私のせいでもある気がする。
さすが健全な男子高校生。ま、同じ歳だけど。
――ぐぅぅー……。
お腹の虫が、二人の耳に届く。
「……何か、腹減ったな……」
「ふふ、突然だね。でも確かに。帰ろっか」
そうだなと言うのに、なかなか離してくれない。
「離してくれないと、帰れないよ?」
「もうちょいだけ……。このまま帰れたらいいのに」
抱きついたまま、私の肩に頭を凭れ掛けてため息を吐いた。
少しだけそのままの状態で、夕陽が二人を包むまで抱き合っていた。
数日後。
私達はデートをしたけれど、二郎が慣れない事をしようと頑張ってくれていたのを、無理して欲しくなかった私の言葉に、二郎が落ち込んでしまった。
夕陽も沈み、暗くなった帰り道。
手を繋ぎながら歩く二人は、無言だ。
「二郎、そんな落ち込まないで」
「だってよ……せっかくの初デートだぜ?」
納得がいかない様子の二郎が、俯いてまたため息を吐いた。
「二郎、頑張ってくれてありがとね。でもさ、私は二郎と一緒にいれるだけで十分だし、せっかく二人でいるのに、落ち込んでる二郎ばっかり見てるのは、嫌だな……」
立ち止まって二郎を見上げる。
「そりゃ、俺だって……」
「じゃ、いつまでも落ち込まないのっ!」
二郎の頬を両手で包む。
驚いたように目を開いた二郎が、私の手を上から握った。
綺麗なオッドアイが私を捕らえて、目が離せない。
「はぁー……マジで好き……」
「なっ、突然言われたら、焦るっ……」
「、好きだ……むちゃくちゃ好き」
そのまま唇を塞がれる。