第3章 二人の距離……交わる想い
でも、彼女達の気持ちも分からなくない。
それでなくても、二郎は男女共に人気でモテる。そんな彼が、私みたいな変な噂がある女としょっちゅう一緒にいて、更に他の男子達もとなれば、気に入らないのは当然だ。
「何もねぇのに責めてんのかよ。それはただの僻みで、やってる事はいじめと一緒じゃねぇのか?」
「そーそー。つか、もし仮にさんが遊んでたとして、お前等に何か関係あんの?」
「それな。直接何かされたわけでもねぇのに、お前等がさん責めるのって違くね? どの立場だよ」
口々に言われ、女子達が何も言えずに顔を見合わせている。
私のせいでこれは嫌だなと思っていると、二郎が口を開いた。
「もうこんな事やめとけ。お前等がどんどん立場悪くなるだけだろ。俺もわざわざモメたいわけじゃねぇし、仲良くしろとも言わねぇ。ただ、こいつにはもう手は出さないでくれ」
頼むと、二郎が彼女達に頭を下げる。
「二郎君……さんの事……好きなの?」
女子達の中の一人が、二郎にそう聞いた。彼女は、二郎に好意を持っているあの子だ。
「悪ぃ、それは直接こいつに言いてぇから、答えらんねぇ」
そう言うと、私の手を握り直し、二郎が踵を返した。
私は手を引かれ、そのまま連れて行かれる。
もう言ったようなものなのにと、こんな状況でよくないけれど、ニヤけてしまう。
手を繋いだまま、静かな校舎を二人黙って歩く。
そのまま、屋上へ向かう。
そして何故か、二郎は鍵を閉めた。
「何で鍵?」
「邪魔されたくねぇから」
向かい合って立ち、私が二郎を見上げるけれど、二郎は違う場所を見ている。
向き合っているはずなのに、目が合わない。でも何かを考え、何かを口にしようとしているようで、眉間に皺が寄り、口を開いては閉じるを繰り返す。
「……だあぁーっ! クソっ……」
「な、急に何っ!?」
突然叫びながらしゃがみこむ。なのに、片手は私の手を握ったままだ。
ガシガシともう片方の手で頭を掻き回す。
私は同じようにしゃがみこんで、ボサボサになった二郎の頭を整えるように撫でる。
「ねぇ、二郎」
私の言葉に、二郎がこちらを向いた。
距離を詰めて座り込んだせいか、かなり近くで目が合う。