第3章 二人の距離……交わる想い
最近の二郎は、大胆と言うか、とにかく色々困る。
そして、人の目を気にする事なく、私の傍を離れなくなった。
「二郎……ずっとついてくる気?」
「何だよ、嫌なのかよ」
「嫌じゃないけど、あんまり私といない方がいいって言ったでしょ?」
「関係ねぇよ。俺が誰と一緒にいようが、それを決めるのは俺だ。誰にも文句は言わせねぇ」
何だろう、この決意に満ちた目は。威圧感が凄い。
ちょっと、格好いい。
「おーい、二郎ー、サッカーすんぞー……って……おっと……」
何度か見た事がある、二郎の友達である男子が私の姿を見て動きを止めた。
「あー……っと、さんも、一緒に来る?」
少し照れながら、私に話しかけてきた。
返事に困って二郎を見る。
「ほら、行くぞ」
手を取られ、いつものように彼らとグラウンドへ行く。
ただ違うのは、見る場所がすぐ近くのベンチだという事だ。
二郎の上着を預かって、楽しそうに走り回る男子達を見つめる。
男の子はこういう時の無邪気さが、凄く羨ましい。こっちまで楽しくなって笑ってしまう。
休み時間を目いっぱい使って、汗だくになりながらサッカーをしている彼等の為に、私は少し席を外して近くの自販機へ向かう。
人数分のドリンクを買い、戻ろうとする私の前に、数人の女子が立ちはだかる。
またかとため息が出る。
「懲りずにまだ二郎君に付き纏って、挙句他の男子にも媚びてんの?」
「マジでクソビッチじゃん」
「気持ち悪いんだよっ!」
一人が私を突き飛ばし、ドリンクを抱えていた私は、バランスを崩して後ろに尻餅をついた。
落としたドリンクが散らばった。
「あーあー、せっかく俺等に用意してくれたドリンクがー」
「寄って集ってとか俺初めて見たわ、女子怖ー」
ゾロゾロと二郎含めた、サッカーしていた男子達が現れる。
「、大丈夫か? 怪我は?」
「大丈夫。ちょっと転けただけだから」
手を借りて立ち上がる。
二郎は何も言わず、女子達を見た。女子達は気まずそうにしていたり、焦りを見せる子もいた。
「お前等さ、こいつの噂がほんとにあった事だって、一つでも証拠出せんの?」
二郎の優しいけれど、何処か怒りを含んだ声音に緊張が走る。