第2章 〔二郎side〕
自分がどう言われて、何を思われても平気だと言い、自分に危害を加える奴でさえも庇おうとする。
平気な訳が、ないのに。
誰だって、身に覚えのない事で責められて、変な目で見られて、コソコソされて孤独になる事を嬉しいなんて思わない。
が抱える寂しさとか、辛さは俺には分からないけど、俺だけでも分かってやれたら。
守ってやりたい。
そう、思った。
ある日曜日。俺はダチと遊んだ後、夕方の街を歩いていた。
「だから興味ないってば、気安く触らないでもらえる?」
聞き覚えのある、心臓が反応する声。
そちらを向くと、二人組の男に挟まれた女が一人。
俺はそこへ近づいて、後ろから女の首元に腕を巻き付けて引き寄せる。
「ごめんな、待たせたか? あれ? 知り合い?」
俺を見上げて驚いているに、笑ってやると安心したような顔で、ホッとした笑顔が帰ってくる。
絡んでいた男達は、嫌そうな顔で去って行く。
首から腕を離すと、こちらに向き直る。
制服姿じゃないのもだけど、いつもは束ねて肩から前へ流している髪も、今日は下ろしていて、雰囲気が違って、ドキリとする。
一人にしとくのは絶対危険だ。つーか、よく今まで無事だったなと、素朴な疑問が浮かんだ。
「しつこくてほんとに困ってたんだよね。助かった、ありがとう」
言って笑うを見下ろすと、手に買い物袋を持っている。スーパーにでも行ってたのか。
「お前、俺が来なかったらどうしたわけ?」
「よくある事だし、どうにかなるかなぁと」
ヘラッと笑った顔を見て、危機感のなさに心配になる。
「よくあるんなら、もっと警戒心持てよな。何かあってからじゃ遅せぇんだからな」
「はーい、せんせー、気をつけまーす」
無邪気に笑うのが可愛くて、つられて笑う。
「買い物か?」
「うん、晩御飯の。二郎は?」
「ダチと遊んだ帰り」
それだけ言った後、の手から袋を取り上げる。
「送る」
「え、悪いよ……」
「さっきのアレ見て、一人で帰らせられるかよ。それとも、俺がいちゃ困んのかよ」
「ううん、困らないよ。ふふ、ありがとう」
ニヤケそうになる顔が見えないように、顔を背ける。