第2章 〔二郎side〕
あれだけ色気もあって、男に慣れてそうな奴なら確かにありえない事もない。けど、俺はアイツが男と一緒にいる所を一度も見た事がない。
そもそも、アイツはいつも一人でいる事が多い。
そういうもんなのか、それともまた俺が知らないだけなのか。
「噂が本当でも嘘でも、一回くらいお願いしたいよな」
「だよな? あんないい女、そうそう出会えねぇじゃん」
「可愛い子は結構いるけど、あのエロさはなかなか」
口々にの事を話す中、何かモヤモヤして立ち上がる。
「ちょっと便所。先教室戻ってて」
俺は校舎に入り、保健室を目指す。
予感がしただけで、いるなんて確証はない。
保健室の中から話声がする。俺は扉を開いた。
またモヤモヤした。
保健医に頭を撫でられて、あんな嬉しそうな顔をするのかよ。
俺にも、その顔を向けて欲しいと思った。
でも、現実は俺をからかう意地の悪い笑顔ばかりで。まぁ、それはそれで可愛いし、悪くはないけど、他にも色んな顔をして欲しい。
俺が、色んな顔をさせたいって思ってしまう。
その日から俺は、と一緒にいる事が増えた。
一緒にいて、話をすればする程、噂がありもしないデマなんだと確信した。
はいつも一人でいる。
授業にも基本的には出てるし、保健医と話をしたりはするものの、男といる事なんて全くなかった。
噂の話をする時の、の顔が諦めを含んでいたのが、納得いかない。
何で違うと否定しないのか。俺には分からなかった。
否定して、誤解が解ければ、ダチだって出来るかもしれないし、普通に過ごす事だって出来る。
けど、そう思っている反面、今の状態のままなら、は俺だけが独占出来るんだという、欲が出てきてしまう。
もし、に彼氏が出来たりなんかしたら、俺の隣でもう笑ってくれなくなるだろうし、今みたいに気軽に話せなくなる。
それは絶対嫌だった。
の隣に他の男がとか、考えるだけで気分が沈む。
そう思うくらいに、俺は多分、に惚れている。
俺に可愛いと言い、からかって笑って、でも人の事ばっか先に考えて自分を後回しにする。