第2章 〔二郎side〕
何で彼女を作らないのかと、ダチに聞かれた事がある。
正直、女となんて何を話していいか分かんねぇし、今は彼女とかより男同士で、ダチといる方が楽しいし、気楽だ。
そう思ってた。
俺が蹴ったボールが、女子の肩を直撃して、駆け寄った俺は、心臓が止まるんじゃねぇかって思った。
すげぇ綺麗で、色っぽくて、言葉を失う。
それは、俺にとって初めての感情で、不思議と戸惑いはなかった。に出会って、俺は目が覚めた気分だった。
まぁ、正しくは俺が知らなかっただけで、同じクラスだったんだけど。
つか、普段から目立つような事しないとはいえ、何もしなくても目立ってて、あんな他の女子とは何か違う、大人びた奴に気づかない俺って、ガチでヤバくねぇか。
ダチが言うには、雰囲気が既にエロいらしい。
確かに分からなくない。
スカートも短ぇし、ネクタイは緩めてて、着崩してる制服のシャツからは、気を抜いたら胸が見えるんじゃねぇかとヒヤヒヤして、健全な高校生男子には刺激が強い。
いつも遠くを見ているような顔で、ぼんやりしながらも、見つめてくる目にはしっかりした意思があって、その目で見られると心臓が跳ね上がって、体の奥が熱くなる。
真っ直ぐと刺さるような視線を向けて、俺の目を綺麗だと言い、普段大人なが可愛いと無邪気に笑う。
そんな些細な事が、こんなにも俺の気持ちを掻き混ぜる。
この感情は、恋愛感情なのか。ただの好奇心か。
に好意的なのは確かだ。
俺がに手を差し伸べた時、は薄い笑顔を浮かべてるのに、俺を拒絶し、遠ざけようとした。
その理由は、噂のせいだと知った。
そういうものに興味がない俺は、それが分からなかった。
ダチにも聞いてみたら、結構有名だったらしく、それすら知らない俺を、ダチは笑った。
「え、と喋ったのかよ、あんま人と会話してんの見た事ねぇのに、二郎やるじゃん」
「アイツ、何かあんの?」
「え、お前知らねぇの? 誰とでもヤるとか、男とっかえひっかえとか、人の男寝取ったとか、他にも色んな噂あるぜ。まぁ、あそこまで美人でエロい女なら仕方ねぇんじゃね? 女子達からしたら、気に入らねぇだろうけどな」