The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
スーパーにて。
クレープを食べながらスーパーに来たのは良いが、俺が最後に来たのは恐らくおばさんが生きていた時だろう。
つまり3歳ぐらいが最後。
だけど覚えている。
おばさんの作り料理が好きで、手を繋いで一緒にスーパーに来ていたのを。
「和泉、何が食べたい?」
「え?」
「なんかリクエスト。何が食べたいか、買い物する間決めとけよ?」
「……え」
リクエストと言われても困った。
何が食べたいと図々しく言っても良いのだろうか、なんて悩んでいる間に三ツ谷先輩はカートと買い物カゴを手に歩き出している。
「好きなヤツリクエストしていいからな。まぁ、もしかしたらリクエストしたやつ作れねぇかもしれないけど。今から買うやつと冷蔵庫の中身のモンで作るから」
「り、リクエスト……」
何が食べたいだろう。
そう思いながら三ツ谷先輩についていくが、夜ご飯をリクエストする事なんてそうない。
既にメニューであるものなら頼む。
だけど『あれが食べたい』なんてメニューに無いものを頼む事は難しい。
「お、ヨーグルト安い」
俺が悩んでいる間に三ツ谷先輩は『アレが安い』と言いながらカゴに商品を入れている。
その横で俺はずっと何が良いのかと悩みに悩んでいた。
(思いつかない……!!)
考えすぎて頭がグルグルしだした。
今までそんなリクエストした事ないし、吉塚さんは『してください』と言ってきた事はあるがしなかったし。
「和泉……」
悩んでいると、トンっと眉間を指で突かれて目を見開かせてから三ツ谷先輩を見る。
そこには柔らかい笑みを浮かべている三ツ谷先輩がいて、クスクスと笑っていた。
「悩みすぎ。思いつかねぇ?」
「……すみません」
「良いって、オレが突然言ったからな。じゃあリクエストは次にしてくれよ。今日はピーマンの肉詰めにするか」
「次…」
また次、来ても良いのか。
その事に何処か嬉しく思っている自分がいて、少し驚きながら三ツ谷先輩の背中を見る。
というか今日もピーマンで良いのだろうか。
ルナマナちゃん、嫌がりそうだなと思いながらもつい笑ってしまった。
「ルナマナちゃん、嫌がりません?」
「あー…嫌がっても食わす。ピーマン嫌い克服させてやる」
「逆に嫌いになりそう…」
「アイツら嫌いって言いながら食うけどな」