The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
隆さんの家に辿り着くと、私は慌てて救急箱を探した。
彼の怪我は思ったより酷く、本当は病院に行った方が良かったのだろうけど、本人が『行かなくても平気だ』と言うので、家で手当する事になった。
「隆さん、ここ座ってください。手当しますから」
「おー。いててっ……」
青宗に殴られた額は血が未だに滲んでいる。
あの時、下手したら彼の命は危険に晒されていたかもしれないと思ったら怖くてたまらなかった。
(生きててくれて良かった……)
あの時、嫌な記憶がフラッシュバックした。
鳴海ねぇの事やおばさんの事を思い出して、怖くて怖くてたまらなかった。
隆さんが殴られた時の事を思い出し、身体が震えた。
「……和泉」
隆さんは目を見開かせたかと思えば、眉を下げてから手を伸ばして私の頬に触れる。
「ごめん。嫌な思いさせて、怖い思いさせて」
ボロッと瞳から涙が溢れた。
「……隆さんが、居なくなったらって」
「うん」
「また大切な人を無くしたらどうしようって……」
涙が止まらなかった。
こんなに涙が止まらないのは、けーすけくんが死んでしまった時以来かもしれない。
「もう、和泉が泣くようなことはしない。絶対にしねぇから……」
優しい指が涙を拭い、そのまま優しく抱き寄せられた。
「ごめんな、怖い思いさせちまって。折角の誕生日、台無しにしちまって」
「そんなの別に良いんです……隆さんが無事で良かった」
「うん……」
少しだけ互いの身体が離れ、隆さんの顔が近付いてくる。
何をするかなんて言われなくても、もうわかる。
目を閉じれば、唇同士がゆっくりと重なった。
寒さのせいか少し冷たい唇に身体が跳ねる。
「ん……」
重なった唇から少しだけ血の味を感じる。
血の味で、隆さんの怪我を手当しなきゃ……と思い出して唇を離した。
「隆さん、手当……」
「そうだった。って、悪ぃ……唇に血が着いちまった」
隆さんは申し訳なさそうに私の唇をなぞる。
「本当は病院行った方がいいと思うんですけど……」
包帯を手に取り、手当をしながらぼやけば隆さんは苦笑を浮かべる。
「このぐらいなら病院行かなくても平気」
「本当にですか?」
「平気平気」