The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
目線の先にいるのは黒龍。
知らない奴もいるけど、その先頭にいるのは青宗と九井でありバッチリ目が合ったが無視した。
というか日中あの特攻服姿だと目立つな。
なんて思いながら、クレープ代を出すために財布を出そうとした時である。
「お釣りです。少々お待ちくださいね」
「え?」
「ん?」
「は、払ったんですか!?俺の分まで!?」
「おう」
驚き過ぎて大きな声を出してしまった。
だって奢られることなんてそう無くて、奢られる時だって『奢った方がいいか?』なんて言われるぐらい。
奢られる。
しかも何も言われずにであり、俺は瞬きを数回してから息を飲む。
「奢らせろよ。オレから遊びに誘ったわけだし」
「……すみません」
「あのな和泉。こういう時はすみませんじゃない」
「え」
「ありがとうの方が良い」
「………ありがとうございます」
「おう。と、ほらクレープ」
チョコバナナクレープを手渡されて、俺は少し戸惑いながらも受け取った。
チョコソースがふんだんにかけられていて、黄色の鮮やかなバナナが沢山乗っている。
「あ、美味っ。ほら食べろよ」
「いただきます…」
パクッとクレープを齧り付く。
生クリームが口の中に広がっていき、チョコの味もいっぱいで甘くて美味しい。
久しぶりにクレープを食べたけどほんとに美味しい。
甘くてクレープの生地はモチモチしていて、思わず口元が緩んでしまう。
「美味しい」
「ホント、美味そうに食うよな」
「美味しいですから」
食べ物は美味しそうに食べなければ、作ってくれた人に悪いから。
そう鳴海ねぇが教えてくれたのを思い出しながら食べていれば、何故か三ツ谷先輩が微笑んでいる。
「何ですか?」
「いや。美味そうに食う顔、良いなって思ってな」
「……三ツ谷先輩ってホント、人のこと掻き乱すの好きですよね」
「え?」
何だこの人。
三ツ谷先輩と佐野先輩もなんでこうも、掻き乱すというか調子を狂わせるのだろうか。
変わった人達だな…と思いながらも、ふと佐野先輩の言葉を思い出した。
あの時『自分を変えてくれるような気がする』と言っていたが、それは俺の台詞だと思う。
(この人達といると、『作っている自分』が壊れていく気がするし変わっていく気がする)
あまり…掻き乱さないでほしい。