The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
俺は幼い頃から武道に助けられた。
なら次は俺が助けたくて、そして自分は12年後の未来でもやり続けなければならない事があるから死ねない。
そんな理由もあるからだ。
「手伝って、くれるのか?」
「うん」
「和泉〜〜!!」
目をうるうるさせだした武道を見て、コイツ本当に中身が12年後の26歳の武道なのだろうか。
そう思いながら彼を見ていた。
だけど凄いと俺は関心した。
人を助ける為にこうして過去に戻って、橘と俺が死んだ原因の人間に接触しようとするのだ。
「お前は相変わらずヒーローだよな」
「え?」
「誰かを助けようと動いている所。12年後の26歳になっても変わらないんだなぁ」
そう俺が言うと武道は何処か暗い表情になっていく。
眉間に皺が寄っており、唇も強く噛み締めており辛そうな泣きそうな表情をしている。
「俺、ヒーローじゃねぇよ。最低な事をした」
「え……?」
「オレ、奴隷となったって言ってただろ?中学卒業したあと直ぐにこの町を出て、お前やアッくん達を捨てた。そのあとお前が家に来たり電話やメールしてくれたのに無視したり、追い返した」
「武道…」
「そしたらニュースでお前とヒナが死んでるの知った。でその後にオレ線路に誰かに突き落とされて、気が付いたらタイムリープしてた」
俺やアッくん……千堂敦達を捨てた。
だからもしかして『ごめん』と泣いていたのかと予想をしながら武道の頭を撫でる。
撫でられた事に驚いたのか、武道はキョトンとしており首を傾げていた。
そしてまた俺は撫で続けた。
「それでもお前は、橘と俺を救おうとしてくれるんだ。立派なヒーローじゃん」
「和泉……」
「ありがとうな、武道」
目を大きく見開かせていたが、直ぐにユラユラと涙が溜まり瞳が揺れていく。
そしてポロッ1粒落ちるとそれを境に、ボロボロと大粒の涙を流していった。
「ごめんっ……ありがとうっ!!」
「うん」
「ありがとう………っ」
武道の零れ落ちた涙がアスファルトに落ちて吸い込まれる。
26歳になっても涙脆く、人の為に動くのは変わらないなとまた頭を撫でてやった。
「頑張ろうな。泣き虫ヒーロー」
「泣き虫は、余計だっ……!」
「ははっ。取り敢えず、佐野万次郎と接触できる方法を探そうか。探して接触するぞ」