The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
この13年間洗濯機の使い方なんて知らなくて、今日初めて使ったが以外に簡単なのかもしれない。
乾燥機もそうだったが、ウチの柔軟剤は良い匂いという感じではない。
「乾燥機終わったら、部屋にお届けしますね」
「ありがとうございます」
「……あら?和泉様、お酒の匂いがする」
「……そうですか?じゃあ俺部屋に居ますね」
酒の匂いがするならシャワー浴びないとな。
そう思い部屋に戻ると2回目のシャワーを浴びる為に、家にある2つのうち自室近い風呂場へと向かった。
家が無駄に広いせいなのか、風呂場は2つあるしトイレなんて数個あるのだ。
和風である家は昔からあるがリフォームを続けているので、綺麗ではある。
「……あの家にまた住みたいな」
なんてもう無理だけど。
昔住んでいた家は取り壊されているので、住むことは出来ないから無理だ。
「……ただいま」
暗くて無駄に広い自室。
そして『ただいま』と声をかける理由は、棚に置かれているあるモノに対してだ。
「鳴海ねぇ、おばさん。ただいま」
その棚には鳴海ねぇとおばさんの、少ないけど遺灰が入っている瓶があるのだ。
元々おばさんの遺灰は鳴海ねぇが持っていたが、鳴海ねぇが死んだあとは俺が受け取った。
鳴海ねぇの遺灰は火葬の後こっそりと。
墓石にもちゃんと遺灰はあるのだけど、毎日行けないからと持っている。
「鳴海ねぇ。昨日ね、真一郎君の弟に会ったよ……」
俺のせいで死んでしまった鳴海ねぇ。
そしておばさんも言えば俺のせいで死んでしまい、2人とも俺が殺したようなもの。
だから親族は俺への当たりが強い。
でも俺のせいで死んだのは2人だけではない…3人もであり、そして俺のせいで不幸にしてしまった人もいる。
「………俺が壊した」
俺が壊してしまった幸せ。
そう思いながらベッドにダイブしてから、サイドテーブルに置かれている写真を見た。
「戻れるなら、あの日に戻りたい……」
三ツ谷先輩の家のように暖かい家庭。
もう俺にはないあの家庭にまた戻りたいと思ってしまうのは、罪だろうか。
「鳴海ねぇ……おばさん………秋にぃ」
ポツリと名前を呟き、それに続くように目から涙が零れた。
そして零れた涙は布団に染みていき、そこはひんやりと冷たくなっていく。