The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
これは骨が折れる。
和泉は息を吐き出しながら笑みを浮かべ、千冬も同じように息を吐くと笑みを浮かべた。
「そうだな、タケミっち!同感だ」
「そう簡単にはいかなさそう」
「だな。こりゃ死ぬな」
「……ハイ!!」
最悪な状態にも関わらず、全員が笑みを浮かべている。
柚葉はおかしいのでは無いかと目を見張った。
「オマエら……何、笑ってんだよ?冗談じゃねぇんだぞ!?本当に死ぬかもしれねぇんだぞ!!?」
「……ゴメンな」
「え?」
突然の三ツ谷の謝罪に柚葉は戸惑う。
その謝罪が何に対してのものか、分からなかったから。
「“その期待が人を苦しめる事もある”。オレの期待が八戒を苦しめた。“兄貴”失格だな」
「……三ツ谷」
「オマエは一人で八戒を守ってきたんだな……柚葉。マジ尊敬する」
じわりと柚葉の瞳に涙が浮かんだ。
そんな柚葉に、八戒は優しく頭を撫でる。
「今度はオレらの番だ」
『柚葉』
『なーに?』
『パパの事、好き?』
幼い記憶を柚葉は思い出していた。
まだ小学生の頃、母が生きていた頃の記憶。
『んー、わかんない。あんまり、お話した事ないモン。おウチにいないし』
『ごめんね、柚葉。私が柚葉を守るね』
『大丈夫だよ。ママはおうちの事気にしないで。だから悪い病気、早く治してね?』
それからまもなくママが死んだ
『ママ……今日、八戒が小学校上がったよ。自分のランドセルが嬉しいみたいで、遊びに行く時も背負ってるんだよ。おかしいでしょ?……心配しないでね、ママ。家族は私が守るから。……だから、いつか……いつかまたギュッってしてネ』
ママが死んでからすぐに大寿の暴力が始まった
毎日毎日
『トイレの電気消し忘れたのどっち?』
『あ……あ』
『アタシ!!』
『オイ、なんで嘘つく?』
『え!?嘘じゃないよアタシが!』
『便座が上がってたぞ。便座上げんのは男だけだ。八戒!来い!』
『待ってよ!もう八戒を叩かないで!!!アタシが代わりに罰を受けるから!お願いします!!!』
『姉ちゃん……』
『じゃあ、テメェはアレだな。これからは二人分殴られるワケだ。それでいいんだな?柚葉!』
ずっとずっと一人で守ってきた
だから稀咲の言葉に食いついた
『八戒を守ってやれ』