The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
そんな八戒を大寿は圧のある瞳で睨み付けた。
「乗せられて強くなったつもりか!?あ"!?家族だと!?本当の家族はどっちだ!?オレだろうが!!テメェはずっと柴家を守ってきた長男に逆らうのか!!?」
「やめろ大寿!八戒に手ぇ出すんじゃ……」
柚葉は何時ものように、当たり前のように八戒を守ろうとした。
だが八戒はもう守られるような弱い男ではない……彼は決意したのである。
八戒の拳が大寿の頬に入る。
鈍い音が聞こえ、殴られた大寿の身体が傾いた。
「八戒!!?」
「東京卍會 弐番隊 副隊長 柴八戒!!柚葉を!!仲間を!!家族を守る為にテメェをぶっ飛ばす!!!うらあああああ!!」
大寿へと向かって走り出す八戒を見て、全員が目を見開かせていた。
「八戒が変わった」
「ああ」
「“殺す”じゃなくて“ぶっ飛ばす”って。タケミっち、未来が変わるぞ!」
「最悪な未来が……変わる」
千冬と和泉は未来が変わると確信する。
八戒が変わったのならば、最悪な未来は訪れないと。
「神は……まだ私に試練を?」
大寿の瞳に涙が浮かんでいる。
だがその瞳には悲しみの色は宿っておらず、殺意が篭っている事に八戒は気付いた。
それに気付いたのは八戒だけではなく、和泉も。
「八戒!!大寿から距離を取れ!」
和泉が慌てて叫ぶも、大寿の動きの方が早かった。
「私はッ、二人も家族を殺めなければならないのですかぁ!!?」
大寿の拳が八戒の頬にめり込み、床へと叩き付けられた。
「こんなにも愛しているのに!!!?」
「八戒!!」
「バケモンめ」
「狂ってる……」
何度も殴られた八戒は白目を向き、倒れたまま動かない。
そんな八戒を涙を流しながら大寿は見下ろしている。
「……残念だ、八戒……。テメェらも生きて帰さねぇ。逃げようとしても無駄だぞ!この教会は黒龍(うち)の精鋭100人が囲んでる」
その言葉に和泉と千冬は慌てて窓の方へと駆け寄り、目を見張る。
雪の降りしきる中、黒龍の特攻服を着ている男たちが大寿の言葉は通りに100人いた。
「いつの間に……」
「……ホントだぜ、タケミっち」
「……そもそも逃げる気はねぇ。千冬、和泉、黒龍を潰さねぇと未来は変わらねぇ!!」