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The best happy ending【東リべ/三ツ谷】

第5章 聖夜決戦


「10か、11ぐらいの時かな。環境に耐えられなくて、でも逆らうのが怖くて……結局刺し殺そうって思った」


従兄弟の秋哉が捕まり、家庭内環境がより悪くなった時。
和泉は何もかも耐える事が出来なくなり、だからといって父親達に逆らうことが出来なかった。

その時、心の中で誰かに囁かれた。


『殺してしまえばいい』


「カッターナイフ持って、父親の所行こうとして……その時に、武道から電話があった」

「オレ?」

「そう。武道からの『辛くなったら、いつでも来いよ』って言葉で、踏みとどまった。自分一人じゃない。味方がいるんだって」


あの時踏みとどまれて良かったと和泉は心底思っていた。
もしあの時武道からの電話が無ければ、きっと父親を刺殺していたと思うから。


「八戒」


三ツ谷は八戒の隣にしゃがむ。


「逃げてんのはオマエだけじゃねぇ。みんな弱ぇ。だから家族(なかま)がいる」

「そんな嘘でオマエを見捨てねぇ!!それが東卍だぁ!!!」


全員が立ち上がった。
その目は真っ直ぐに大寿を見据えている。


「和泉、オマエは……」

「嫌ですよ。私だって戦います。大切な仲間が戦っているのに見てるだけなんて嫌ですよ」


言う事なんて聞かない。
そう言いたげな和泉の表情に三ツ谷は苦笑を浮かべる。


「八戒、弱くてもいいんだよ。オマエには支えてくれる人がいるんだから」


和泉の微笑みに八戒は涙を流した。
そして勢いよく立ち上がる。


「あ"ぁあ"あぁ!!」


八戒は叫ぶと黒龍の特攻服を脱ぎ捨てた。
涙を流すその瞳は真っ直ぐに澄んでいて、弱さや恐怖への脅えはない。


「みんな、下がってくれ。タカちゃん、千冬、タケミっち。オマエらボロボロじゃねぇか。それに和泉さ、折角の誕生日なんだから大怪我なんてする必要はねぇんだよ」

「八戒……」

「……ありがとう。もう怖くねぇ」

「八戒……」


決意したその表情に三ツ谷と和泉は微笑む。
彼のその姿はもう、何かに怯えていたり怖がっている姿じゃない。

真っ直ぐに歩き出した八戒は大寿の元へと向かう。
揺るぎない瞳をしながら。


「二度と黒龍の特攻服は着ねぇ!!」
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