The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「え?」
「オレを……家族をずっと守ってきたのは柚葉なんだ」
「……柚葉?」
八戒は言っていた。
自分が大寿の暴力から柚葉を守っていたと。
だから、武道も千冬も三ツ谷も和泉をそれを信じていた。
「八戒……じゃあ、オマエはずっと、ずっと守られてきたって事か?『守ってきた』っていうのは全部嘘なのか!?」
「柚葉が、守っていたの?ずっと、八戒を……?」
「オレは、柚葉のしてきた事をさも自分がした事のようにオマエらに話した」
「八戒、オマエ……馬鹿だろ」
和泉の言葉に八戒は目を瞑る。
「……オマエ、それって最低じゃん」
千冬の言葉が八戒の胸に突き刺さる。
「ダッサ」
「もう言うな……八戒」
「若ぁー。女に守られてただけでもダセェのに、守ってきたなんて嘘、どのツラ下げて言えんだ?」
「オマエらには関係ねぇだろ!?アタシが自分で決めたんだ。八戒は悪くない!!もういい、八戒!喋るな!」
柚葉は必死だった。
弟を守ろうと、八戒を庇おうと必死だった。
だが、八戒は柚葉の言葉に耳を傾けずに話し続ける。
「オレを許してくれ、タケミっち。こんな事になったのは全部、オレのせいだ。オレの嘘でみんなを巻き込んだ。本当は只々大寿が怖くて刺すしかなかった。自分の弱さから逃げる為に」
涙を流しながら、まるで懺悔するように呟く八戒。
そんな八戒から武道は背を向ける。
「八戒。オマエはダセェ!!でもなぁ、ダセェのはテメェだけだなんて思うなよ?オレはもっとダサかった」
「タケミっち……」
「ホント……ダセェな八戒」
「……タカちゃん」
ゆらりと三ツ谷は立ち上がりながら、八戒へと視線を向ける。
その目は八戒を決して責めてはおらず、何故か何処か恥ずかしそうにしていた。
「“生まれた環境を憎むな”なんてカッコつけてあれだけどよ。オレも本当はすっげぇ憎んだ。一度、何もかも嫌になって妹二人残して家出してさ。次の朝帰ったら、母ちゃんに思いっきりぶん殴られた。ダセェだろ?その後、母ちゃんらオレの事抱きしめて、“いつもごめんね”って泣いてた」
「言っておくけど八戒、弱いのは私だって同じだから」
「え……」
「私も自分の弱さから逃げる為に、父親を刺し殺そうとした事があった」
和泉の言葉に全員が目を見開かせた。