The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
初めての事だった。
その事に八戒、千冬、和泉が目を見開かせながら殴り飛ばされた武道へと視線を向ける。
「ちっ。痛くも痒くもねぇ……」
余裕げに笑う大寿だったが、突然彼はその場に座り込んだ。
何が起こったのか、大寿さえ分からず混乱している。
そんな中、武道はゆっくりと揺れながら立ち上がった。
「万が一……」
「タケミチ……もう……やめろって」
「……未来を変えれるなら、命を懸ける価値はあるだろ?八戒……頑張る事は辛くねぇよ。1番辛い事は……“孤独”な事だ」
血だらけで微笑む武道に、八戒は目を見張る。
「なんでも話せよ、八戒。オレら、友達だろ?」
彼の言葉に、武道の姿に八戒は目に涙を浮かべて、その場に崩れ落ちた。
涙を溢れさせながら、声を震わせながら言葉を発する。
「タケミっち。オレを……助けてくれ」
「任せろ、八戒」
一方、青宗と九井はあまりの驚きに唖然としていた。
あの大寿が膝をついていて、立ち上がれていないのだから。
「どうした、ボス?」
「嘘だろ?大寿(ボス)に膝をつかせやがった!」
「え!?」
意識を取り戻した柚葉は驚いていた。
あの化け物のような兄が、膝をついていることに。
「東卍の隊長クラスをなめんなよ!」
「すげぇ……相棒」
「はは……武道、オマエって、やっぱり、凄いや」
涙を浮かべながら、和泉は微笑む。
弱いから、喧嘩が強くないから、自分が守らなければ。
ずっとそう思っていたのに、いつの間にか自分が守らなくても彼は戦えるのだと自覚した。
(私が守る必要なんて、なかったのかも……)
「八戒。オマエの守りたかったモノ……柚葉は俺が守る!!」
「……違うんだ、タケミっち。オレ……オレの顔、アザ一つねぇだろ?」
「八戒?」
「……柚葉は、柚葉はボロボロなのに」
八戒の言葉に全員が眉を顰める。
一体何を言いたいのか分からず、ただ疑問を覚えるだけ。
「守りたかった。家族を……柚葉を守りたかった。けど、大寿に逆らう度胸なんて、オレにはなかった」
「え?」
「八戒、オマエ……まさか」
「逆だ……オレはずっと守られてきたんだ。……あれ、嘘なんだ」
『じゃあ、テメェはアレだな。これから二人分殴られるワケだ。それでいいんだな?柚葉』