The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
誕生日だから、来なくていい。
そう言う前に和泉に言われてしまい、三ツ谷は苦笑を浮かべる。
「特攻服に着替えてくる」
「私も着替えます」
「いや、そのままでいい」
「……え?」
大寿とやり合うならば着替えた方が良いのでは。
和泉は三ツ谷家に置いている動きやすい服に着替えようとしたが、何故か止められてしまった。
「やり合うのはオレだけでいい。和泉は見ててくれ」
「でも……」
「折角の誕生日なのに、オマエがやり合う必要はねぇよ。オレの勝利の女神として居てくれるだけでいい」
「居るだけでって……」
「納得してねぇな、その顔」
あからさまに納得していないという表情に、三ツ谷はまた苦笑を浮かべながら彼女の頭を撫でた。
「一緒に戦おうとしてくれるのは嬉しい。だけどな、これはオレのエゴなんだ。好きな女の誕生日を血みどろにしたくねぇ。頼む」
真剣な表情、真剣な言葉に和泉は言葉を詰まらせる。
自分も戦い、大寿とやり合い、武道を助けようとしていた。
三ツ谷の助けになろうと思っていたが……。
「そこまで言うなら……でも、もしの事があれば私も出ますからね
「やめて欲しいんだけどな……ワンピースだし」
「見せパン履いてるんで」
「そういう事じゃねぇんだよなぁ……」
三ツ谷はもしの事がないようにしなければ……と思いながら急いで特攻服に着替えた。
そしてインパルスの鍵を手にして、和泉を連れて外に出る。
和泉にメットを投げ、エンジンをかける。
「和平結んだのに良いんですか」
バイクを走らせようとする前に、小さく和泉が呟く。
「止めるつもりはありません。でも、もし和平を破ることで隆さんが佐野先輩達に何か言われることがあったら……」
三ツ谷は和泉の方を振り返る。
表情は無表情だが、瞳は心配そうに揺れていた。
その瞳を見つめてから三ツ谷は静かに笑った。
「言われた時は、その時だよ」
排気音を鳴らし、バイクを走らせる。
場所は宇田川キリスト教会。
(バカ道。なんで大寿とやり合ってんだ)
三ツ谷の背中にしがみつきながら、和泉は小さく舌打ちをした。
何故、やり合う事を言わなかったのか。
何故、大寿とやり合うことになったのか。