The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
綺麗に切り分けられたケーキは皿に盛り付けられ、和泉の目の前に差し出された。
白くふわふわしたケーキは一際美しく見え、和泉はなんだか食べるのが勿体なく思ってしまった。
「食べねぇの?」
「た、食べます!」
フォークで1口サイズに切り分けて、生クリームがたっぷりついたケーキを口に入れる。
優しい甘さが広がり、イチゴの甘酸っぱさも口の中に広がっていく。
「美味しい……!」
「そりゃ良かった。和泉はほんと、なんでも美味そうに食うよな。食わせがいがあるよ」
「だって、本当に美味しいですから」
嬉しげに微笑む和泉はまた1口ケーキを頬張る。
こんなにも美味しいケーキは初めてかもしれない、こんなにも美味しいものを食べれるなんて。
和泉の心の中は至福で埋まっていた。
幸せで満たされている。
そんな時、携帯の着信音が部屋に響いた。
「オレのか……ん?千冬?」
三ツ谷は携帯を開いて直ぐに眉を寄せた。
画面に表情されているのは千冬の名前であり、ざわりと嫌な予感がする。
「もしもし、千冬?どうした?」
電話に出た三ツ谷を横目に和泉はまたケーキを食べる。
だが胸がざわりと嫌な予感がして、三ツ谷と同じく眉間に皺を寄せた。
「は!?」
ビクリと肩を震わす。
三ツ谷の突如の大声に驚いていれば、彼の表情は険しいものになっていた。
「わかった。すぐに行く」
携帯を切った三ツ谷は勢いよく立ち上がる。
「どうかしたんですか?」
「……千冬からタケミっちが黒龍とやり合ってるって連絡があった」
「黒龍って……もしかして大寿と!?」
「ああ。本当は半間と稀咲との4人で大寿とやり合う予定だったが、その2人に裏切られたってな。で、千冬は今拘束されてるらしい」
「裏切られた……」
和泉の手からフォークが滑り落ちる。
半間が大切な幼馴染を裏切った。
その幼馴染である武道は今、黒龍の総長である柴大寿とやりあっている。
情報が多すぎて混乱してしまう。
「オレは今から、タケミっち達の所にいくけど」
「私も行きます」
「……でも、オマエ、今日は」
「武道が戦っているのに放置なんで出来ません。誕生日だからなんて関係ないです」
「……オマエならそう言うと思ったよ」