The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「なんで……」
明らかに不機嫌そうな表情の三ツ谷に和泉は首を横に振り、彼の手首を掴む。
「ケーキ食べたいです……ご馳走も」
このままだと確実に抱かれ、食事も冷めてしまう。
それだけは避けたい和泉はなんとか、三ツ谷の不埒な手を止めたかった。
「はぁ……まぁ、料理冷めちまうからな。今は辞めとく」
残念そうに溜息を吐き出す三ツ谷に、和泉はホッとしながらめくれた裾を治していたが、耳元に三ツ谷の唇が寄せられた。
「飯が終わったら、抱くから」
囁かれた言葉に数秒、和泉は固まる。
先程彼はなんて言ったのだろうか……と考え混んでから、その言葉を理解した途端に爆発するのでは無いかとぐらいに顔を真っ赤に染まった。
抱く、キス。
この2つの言葉は未だに慣れていない彼女は、直ぐに顔を真っ赤に染めてしまう。
未だに初心な反応を見せる和泉に、三ツ谷は小さく笑った。
「顔真っ赤にしてどうしたんだ?」
「なんでもないですっ!早く食べましょう!」
「召し上がれ」
「いただきます!」
ヤケクソのように叫ぶ和泉はスプーンを手にしてから、ホカホカに湯気が漂うグラタンをすくう。
口にすれば濃ゆいホワイトソースの味が広がり、マカロニの柔らかい感触に舌鼓をうつ。
「美味しい……!」
「それはなにより。オマエの為に作ったから、オマエにそう言ってもらえて嬉しいよ」
「隆さんって本当に料理上手ですよね……」
嬉しげに食べる和泉に三ツ谷は笑みを浮かべる。
さっきまで恥ずかしさで怒っていたのが嘘のようで、まるで小さな子供のようだと感じてしまう。
この先もずっと彼女の為に料理を作りたい。
三ツ谷の視線は和泉の左手の薬指へと注がれた。
(いつか……未来で、和泉の傍でずっと)
ゆっくりと瞳を閉じる中で、未来を創造してみる。
微笑みを浮かべながら、白いウエディングドレス姿を身にまとう和泉。
(本当に叶えばいいのに)
三ツ谷がそんな事を思っているとも露知らず、和泉は楽しげに嬉しげに食事をしていた。
食事を終えた2人。
三ツ谷はある程度の食器を片付けてから、ケーキを和泉の目の前に置く。
「今、切り分けるからな」