The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
和泉は火照った頬を撫でながらも、携帯を取り出してからメールの内容を確認した。
メールはマイキー、ドラケン、エマ、武道、千冬達から。
内容は全員が和泉の誕生日を祝う言葉ばかりだった。
「メール、なんて内容だったんだ?」
キスを邪魔された三ツ谷は若干不機嫌そうな表情。
「あ、全員誕生日祝いの言葉でした。あと隆さんと有意義に過ごせとか……」
「ふーん」
「あの……キス出来なかった事に拗ねてますか?」
恐る恐ると聞けば、三ツ谷は無表情で和泉を見下ろす。
「そうだって言ったらどうする?」
そう言うと三ツ谷は和泉に触れるだけのキスを落とした。
「和泉との時間を奪われるのは、あまり好きじゃねぇよ」
「そ、そう、ですか……」
「さてと、飯食べるか。準備するから待ってろよ」
不機嫌そうな表情からガラリと変わって微笑む三ツ谷は、小さく鼻歌を歌いながら台所に立った。
(機嫌良くなってる……)
数分経つと、三ツ谷は『よし』と呟いてから色んな料理をテーブルに運んできた。
「お待たせ」
テーブルに並ぶのは、グラタンにミネストローネにガーリックパンにポテトサラダ。
そしてテーブルの真ん中には真っ白な生クリームに覆われたホールケーキ。
「わぁ……」
「ケーキにはロウソクを」
三ツ谷は部屋の電気を消してから、ホールケーキに付けられたロウソクに火を灯す。
ケーキにはチョコプレートもあり、『和泉 誕生日おめでとう』という文字。
じわりと目頭が熱くなるのを和泉は感じた。
鳴海が亡くなり、秋哉が少年院に入り、真一郎が亡くなって、初代黒龍との交流もエマとの交流を途切れたあとの誕生日はいつも一人ぼっち。
(自分が生まれた日が好きじゃなかった……)
産まれてくる事を望まれた訳じゃなかった。
だけど今、こうして誕生日を祝ってくれてそばにいてくれる人がいる。
「和泉、ロウソクの火、消して」
「はい……」
ふう……と息を吹きかければロウソクの火が消えた。
その瞬間、パーン!!という弾けた音が響いてビクリと肩を震わせる。
「和泉、誕生日おめでとう!産まれてきてくれて、ありがとうな!」