The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
ー三人称ー
水族館は8年前と変わらず美しく、キラキラと輝いているものであり、和泉は瞳を輝かせながら水槽の中で泳ぐ魚や海の生き物を眺めていた。
その姿はまるで小さな子供のようで、三ツ谷は小さく笑いながらそんな彼女を見つめる。
ウミガメ、タツノオトシゴ、クラゲ、カクレクマノミ。
可愛らしい生き物から不思議な生き物を眺めた和泉は、懐かしさと楽しさで自然と笑みを零していた。
「楽しい?」
「はい……!」
シャッターチャンス。
三ツ谷はそう思い、携帯を取り出すとカクレクマノミを眺める和泉の横顔を写真で撮った。
シャッター音に気付いた和泉はギョッとして、慌てて三ツ谷の手から携帯をひったくろうとしたが、素早く交わされた。
「ちょ!?なんで撮ったんですか!?」
「あまりにもキラキラした顔してて可愛いかったもんだからよ。悪いけど、この写真は消さねぇからな」
「消してくださいよ!?」
「嫌だ。ほら、ウミガメ近くに来たぜ」
「わ、ホントだ……」
さっきまで写真を撮られた事で慌てていた和泉だが、傍を泳ぐウミガメに興味が移る。
それが小さな子供のようで三ツ谷は思わず笑ってしまった。
「あ、ペンギン」
「あ、あそこにいるペンギンの頭の毛モヒカンみてぇだな。タケミっちみてぇ」
「確かにそうですね。ふふ……武道のモヒカンはダサいけどペンギンのモヒカンは可愛いですね」
ふと、和泉は幼い頃の事を思い出した。
真一郎と鳴海と共に水族館に来た時も、モヒカンみたいな毛を付けているペンギンがいたことを。
『見て、和泉。真一郎みたいなのがいるよ』
『ホントだ、真一郎君みたい。でも真一郎君はダサいけど、あのペンギンはダサくないや』
『おいコラ、誰がダサいだって?』
今も昔もここは変わらないんだな……と思いながら、ペンギンを眺めてから携帯を取り出し、写真を撮る。
そして、隣でペンギンを眺めている三ツ谷の横顔を写真で撮った。
「あ、おいコラ。何撮ってんだよ」
「仕返しです。言っておきますけど、消しませんからね」
「たくっ……」
和泉は悪戯っ子のように微笑む。
その姿は年相応であり、三ツ谷も釣られて笑ってしまう。