The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
救ってくれたヒーローに、私は依存していて執着している。
その想いは黒くてドロドロしていて、純粋なものなんかじゃない。
「それが、羨ましいんだよな……」
「……え?」
「オレも、和泉に依存されてぇ」
そうやって微笑む隆さんの瞳に、ゾクリとする。
熱が籠った、暗くてドロッとしたもの。
嫉妬の色が見えた。
「まぁ、羨ましいとかは1度置いておいて……」
「え、あ……」
「半間と稀咲とつるんでたのが気になるっちゃ、気になるな」
隆さんは顎を撫でながら唸る。
「明後日、千冬に聞いてみるか。タケミっちの奴は聞いても答えねぇだろうし。アイツ、変に頑固だしな。千冬ならちょっと脅せば答えるかも」
「隆さん、たまにガラ悪いですよね」
「不良やってるからな。取り敢えず、和泉は飯食いな。明日、朝早くから出かけんだから飯食って早く帰って寝ないとな」
明日、という言葉に『あ……』という言葉を零す。
そう、明日は私の誕生日であり隆さんとのデートの日。
ついさっきまで色々ありすぎて忘れてしまっていた。
「明日、楽しみだな」
「そうですね」
武道の事やヒナの事、色々気になる。
だが、明日はその事を忘れて楽しむ事にした方がいいのだろうか。
そう思いながら、暖かいシチューを口にした。
すると私の気持ちを見透かしたように、隆さんが言葉にした。
「色々考えるのは、明後日にしようぜ。明日は和泉の誕生日なんだ。楽しいことだけ考えような。焦る気持ちもわかるけど、焦ったって良いことはねぇから」
「……はい」
隆さんの言う通りかもしれない。
だが、ふと思い浮かんだのは黒龍の事だった。
あやふやになっていたが、八戒は大丈夫なのだろうか。
金輪際関わらないという事になったが、本当に大丈夫なのだろうかと色々不安が押し寄せた。
未来のことが解決した訳じゃない。
しかも、ヒナと武道が別れてしまっていて……こんな時に楽しんでもいいのだろうか。
(色々考えてしまう……)
ちらりと隆さんを見れば、テレビを眺めていた。
だが、彼も何か考えているような表情を浮かべている。
色々悩みながらも、私はシチューを口にしていく。
(色々考えるのは、明後日にするべきかな……)