The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「でも、タケミっちの気持ちも分かっちまう。好きな子、巻き込みたくねぇって言うのは分かる」
隆さんの瞳が真っ直ぐに私を見る。
「隆さんも、武道と同じ気持ちなんですか……?」
「好きな子に怪我して欲しくねぇとか、危ねぇ目に遭って欲しくねぇって思っちまうんだよ、男ってのは。オレもそう。和泉が喧嘩強いのは知ってるし、そんなヤワじゃねぇのも分かってる。でもな、危険な目には遭って欲しくねぇ」
まるで小さい子に言い聞かせるかのように、優しい声で隆さんは言葉にする。
そして同時に彼の瞳は何処までも優しいものだった。
「タケミっちは、苦しい選択をしたと思うよ。好きな子と別れるなんて、苦しい。オレなら絶対に出来ねぇよ……危険な目にあわせたくねぇから別れる……そんな選択出来ねぇかも」
「隆さん……」
「タケミっちのこと、責める事は出来ねぇな」
私も同じかもしれない。
好きな人が危険な目に遭うのは避けたい……愛してる人が危険な目に遭うなんてもう、二度と……。
脳裏に浮かぶのは鳴海ねぇの顔だった。
私のせいで、死んでしまった鳴海ねぇ。
あの時、私が……と思っている時、隆さんの手が私の手に触れる。
「でも、オマエが苦しそうな顔してるのはヒナちゃんとタケミっちが別れた事だけじゃないだろ?」
「……お見通しなんですね、隆さんって」
「顔に出てるからな」
「……武道と千冬の奴が、何故か修二と稀咲と一緒にいたんです。何か企んでるようなんですけど、『なんでもない』の一点張りで。挙句にさっき武道に会ったら『和泉には関係ない』って言われて……」
「なるほどな……」
「私は、武道に頼って欲しいんです。私を救ってくれた恩返しがしたい……なんでも協力したい。1人で抱え込むのはやめて欲しいのに……」
武道は何も言ってくれなかった。
私を避けているかのような素振りに、苛立ちと悲しみが込み上げてくる。
「妬けるな」
「え?」
「和泉がそこまでタケミっちを想ってることが、ちょっと妬ける」
「いや……多分、私、想ってるっていうか、依存してると思うんですけど」
1回、周りに言われたことがある。
私は武道に依存していて、執着しているんだと。
確かにそうだと何回も思った。