The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
結局はヒナを思ってのこと。
武道なりに考えたのは分かったけれど、ヒナはそんな事は知らない。
「……ヒナから連絡があった。お前と別れたって報告があった」
「え……」
「泣いてた。それでさっき会ってきたら、目が真っ赤になるぐらいに泣いてた。なんで泣いてるか分かるか?お前が中途半端なウソをついたからだ」
私の言葉に武道は視線を逸らす。
「……確かに、お前の気持ちも分かる。けどな、ヒナの気持ちはどうするんだよ。お前達が別れるも付き合うも、親が決めることじゃないだろ」
「確かに、ヒナのお父さんからは別れて欲しいって言われた。でも、別れるかどうかはオレが決めたことなんだ」
「でもヒナが決めてはいないだろ。ヒナは何も知らないんだぞ」
「知らなくていいんだよ……。何も知らず、幸せに生きてて欲しいんだよ……」
武道の瞳から涙が零れる。
青空を連想させる、武道の瞳から何粒ものの大粒の涙が溢れて雪に落ちていく。
こんなにも、ヒナの事を想っている。
だからこそ別れたんだろうけれど……。
「馬鹿が。泣くほど、ヒナの事好きなくせに」
「好きだよ……好きだよ。すげぇ好きだよ……!でも、別れた方がいいんだよ……これが正解なんだ」
「……阿呆」
眉を下げながら、嗚咽を漏らす武道を見下ろす。
こんなに泣くほど好きなら、別れなければいいのにと思う気持ちと、彼が別れた方がいい思った気持ちも分かるから何も言えなくなってしまう。
だけど、2人には別れて欲しくなかった。
雪が静かに降り積もる中、私と武道は無言だった。
何も言えずにいる中で、武道が口を開く。
「そういえば、なんでヒナの事名前で呼んでんだ?」
「会ってきた時、私が女の事話してきたんだよ」
「え!?」
「その時に、名前で呼んで欲しいって言われた。その話は置いておいて……お前、修二と稀咲と何企んでる」
ビクッと武道の肩が跳ねる。
「お前から、修二の煙草の臭いがする」
殴った時に微かに修二の煙草の臭いがした。
アイツに会って、至近距離にいなければ臭いが移ることは無い。
コイツが何故修二と会っているのか分からない。
だが、あの時あの4人でいたという事は何か企んでいるはず。
「なんでもない」
「嘘つけ」
「本当に何でもねぇよ!」
「嘘だろうが」